目的を達成しても終わらない戦い。ヒロインが起死回生の手を打っても変わらない結末。
このバッドエンドへの道が、特別な力を持つわけでもない普通の人間(共和国の人間)たちの手で作られていることがすごく怖いです。
ひたすら死の行軍を続ける5人のスピアヘッド。
そこに脳を抜き取られレギオンの指揮官となったシンの兄 ショーレイが立ちふさがります。
圧倒的物量で押しつぶしていくレギオン。ここでレーナがライデンの視覚と同調し、迎撃砲でレギオンの増援を撃破していきました。ハンドラーに失明の恐れのある視覚の同調、共和国の許可が決して下りていないはずの迎撃砲による支援。そこを指摘されたレーナは開き直ったように言いました。
「失明なんていつかの話。迎撃砲の無断使用も命令違反も死ぬわけでもあるまいし!」
「どうせ共和国だって道理なんかわきまえてないんです。私だけ道理に従ってやるいわれなんてありませんしとっととこうしてればよかったんです」
今まで優等生だった子が反抗期のように開き直っているのって良いよね!!!
ちょっと乱暴に言い捨てるような長谷川育美さんの演技も好きでした。兄とあったことで、ちょっと興奮しているシンの時もそうでしたが、キャラの普段とは違う一面が見れるのは楽しいです。
しかし、どうやって迎撃砲を使用したのか? それはレーナがアンリエッタを「脅し」ていたからです。アンリエッタが昔見捨てた同級生。それがシンだと見抜いたレーナはアンリエッタにその事実を告げ、今度こそ助けるように要求します。
「二回見捨てて、三回目も見捨てるの?」
聖女⇒悪魔。これが悪堕ちヒロインか・・・!!
うーん。ゾクゾクしますね!!
今までレーナは軍人として規律正しく、誠実に対応しようとしましたが、それでは戦場で戦うシン達を助けられない。今回は、レーナが初めて明確にスピアヘッド>共和国と優先順位を決めた話のような気がします。
レーナの助けもあり、シンの兄「羊飼い」を撃破できたシン達。レーナも含めて楽しく会話をします。初めて戦場でリスクを負ったレーナがやっとスピアヘッドの仲間として認められた瞬間のように思います。しかし、そこでライデンが何気ないように言いました。
「そんじゃま行くか!」
彼らの今回の作戦に勝利条件はありません。終了条件は彼らの死。それまで、どこまでも戦場を進んでいきます。そして、現在の戦場の先は86区の範囲外。ハンドラーが同調できる範囲外。
「待って…待ってください!置いて行かないで!」
レーナは初めて仲間として認められた次の瞬間、スピアヘッドの戦場からはじき出されることになりました。悲鳴を上げるレーナに対して、明るく死の戦場へ向かうスピアヘッド。
共和国に追いやられ、望まない戦場で戦わされてきた86-エイティシックス-。その86区から出られることは、たとえ死にに行くとしても、自分たちで自由を勝ち取った”束縛からへの脱出”なのかもしれません。
「少佐。先に行きます。少佐」
スピアヘッドたちのシグナルがロストしました。
この間のスピアヘッドたちの描写は音声のみ。レーナが蚊帳の外になっている感じがより強くなりましたね・・・。
冒頭でも言いましたが、登場人物たちが何をしたところで悲劇の結末は変わらないのがこの作品の特徴だと思います。だからこそ、彼らが追い込まれる一つ一つの場面で息をのみ、一つ一つの行動を目に焼き付けるように見てしまいます。
少しでも希望はあるのか分かりませんが、最後までスピアヘッドの生き方を見ていきたいと思います。
あと、レーナが「シン」って叫ぶところが凄くよかった!
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