主人公とヒロインは中学時代に何故付き合い、そしてなぜ別れてしまったのか。
一度離れ離れになってから再会したことで、より深く相手のことや自分のことを考えるようになった二人。彼らは再び恋人として心を通わせるのか、それとも・・・?
主人公が深く内省をするタイプであり、主人公のヒロインへの愛情の深さ、だからこその独占欲との葛藤など主人公の心の中にどっぷり浸れる作品でした。
また、周囲の恋のライバルたちが良い子たちで、爽やかな青春物語としても凄く楽しめました。
ネタバレありです。
浅田結弦には、後悔がある。それは中学生時代に付き合っていた恋人、水野藍衣のことだ。自由な藍衣が、好きだった。でも、彼女の自由さに、苦しんだ。過ぎ去った中学時代の恋。二人の恋はゆるやかに過去となり、思い出になってゆくはずだった。しかし、高校一年の夏、藍衣は再び、結弦の前に姿を現す。「結弦、好きだよ」 ……以前と変わらぬ、むき出しの好意を携えて。言葉にしないと伝わらない。でも、言葉だけでは分からない。正反対の二人が、ぶつかり、すれ違い……ようやく見つけた答えとは。後悔を抱えた少年少女の、恋と対話の物語
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自分とは違う感じ方の違いに惹かれながら、付き合えば価値観の違いに苦しむ。
相手のありのままを受け入れていこうとする主人公の結弦と天真爛漫・純真無垢でどこまでも自由な藍衣。一方は相手の自由な生き方を束縛しないように我慢して、もう一方は自分を受け入れてくれる恋人に甘えてしまい、二人の関係は中学時代で破綻してしまいます。
高校に入り再会することで、何故好きだったのに別れなければならなかったのか、お互いの何がいけなかったのかを主人公の結弦は考えるようになっていく物語。
入り方からして暗い展開ですが、藍衣の底抜けな真っすぐさや周囲の登場人物、小田島や安藤が凄く良い人たちで、(しめさば先生の作品の中では)爽やかな青春ものとなっています。
この作品の主人公である結弦は中学時代に付き合ったこと、別れたことについて、深く、深く自分の心を掘り下げようとします。
掘り下げた答えは見当違いだったり、ある程度合っていたりしましたが、どちらにせよ藍衣に対する深い愛情を感じました。
小田島薫にも諭された結果、別れた理由は自分の考えをしっかり伝えなかったことや相手の気持ちを勝手に推測し決めつけたなどのコミュニケーション不足という割とありふれた理由でした。
しかし、その答えに行きつくまでに散々悩んでいた結弦の心の中を見ていたことで、主人公の考えや感情に深く入り込むことができました。
はたして、小田島薫に恋の勝算はあるのか!?
物語の展開、登場人物の関係から見て負けヒロイン一直線な小田島薫。明らかに恋のライバルである藍衣に対しても塩を送るような行動をしてしまったりと、ひげひろの三島やとらドラの亜美ちゃんを思いだしてしまいます。(ちなみに、そんな不器用な薫が私は好きです。)
しかし、最後の方では結弦が初々しく薫を名前呼びするなどのド直球なラブコメ展開。そして、結弦の愛するべき日常の中に薫が入っているという、ワンチャン逆転あるかと思わせる場面も!!
・・・でも、結弦がその日常のひと時を愛せるようになったのは藍衣のおかげなんですよねー。
頑張れ、薫。動揺してスマホを落とすところとか可愛かったよ!
お互い好きだからこそ、友達としてまずお互いの価値観をしっかり理解してから、関係性を進めようとする主人公とヒロイン。
そこで関わってくる藍衣が好きな安藤と、結弦が好きな薫。男女二人ずつの四角関係って最近では珍しいような・・・。一見ドロドロですが、この4人とも好感を持てる人物なので、読んでて爽やかな気分になりました。
既に2巻の発売が決定しているようなので、続きが楽しみです!
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