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「恋愛関係には決して発展しない理想的なアイドルとファンの関係」きみは本当に僕の天使なのか 1巻 感想

「ひげひろ」のしめさば先生の最新作!

ひげひろと同じく、ライトノベルでは中々踏み込めない闇の部分にあっさりと踏み込み、私の心を不安ともどかしさでいっぱいにしてくれました(笑)。

それでも、読み進める手は止まらず、最後には読後感の良い終わり方となりました。人は選ぶのかもしれませんが、非常に面白かったです。

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あらすじ

推しアイドルとの疑似カップル生活!?

“完全無欠”のアイドル瀬在麗。推したアイドルが不祥事などで、ことごとく引退していった僕の、最後の希望が麗だった。そんな麗の握手会。しどろもどろにも言葉と握手を交わしたその夜に、彼女は何故か僕の家に押しかけてくる。「君さ、あたしの彼氏になってくんない?」麗のその言葉から僕の日常は急変した。ステージ上の麗しか知らない僕に次々と開帳されてゆくオフの姿。そして、麗が僕に近づいてきたことには「恋人になる」とは別の目的があり……。二人の”恋人ごっこ”が向かう先にあるものとは。アイドルを巡る、新たなる闘いの物語。

ガガガ公式HPより
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特徴

アイドルの光と影を色濃く表現した作品。影の部分では「あれ、これ18禁ゲームで見た設定だなあ(汗)」と思うくらい生々しい部分を表現しており、ライトノベルでこれは大丈夫なのかというところまで踏み込んでいると思います。一方、光の部分ではアイドルというものの神聖さやプロフェッショナルな部分を丁寧に描写しており、アイドルというものを誇りある職業として強く意識することができました。

他にはアイドルファンである主人公の優羽とアイドルである麗の関係。わりとラブコメではありがちですが、彼・彼女は真の「アイドルファン」と「アイドル」であり、双方がその部分を尊敬しているからこそ、容易には恋愛関係には発展しません。そこに関しては、あとの「魅力」のところで駄文を続けさせていただきます。

そして、最後には正義(アイドル)が勝つという王道展開。アイドル業界の腐った部分をこれでもかと見せてくれた後に、正義の鉄槌を腐った大人にぶち込んだのはスカッとして読後感が非常に良かったです。

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魅力

1番の魅力としてはひげひろと同じく、それぞれの立場が恋愛することを妨げるところかなと思います。

最近のラブコメでは、特に寄り道なく付き合ってしまう、または物語の開始時点で付き合っているというのも多い気がします。そこからのイチャイチャも大好物ですが、やはり個人的には付き合うまでの関係が一番楽しいかなと思います。かといって、どう見ても両思いなのにグダグダ双方告白しないと、それはそれで萎えてしまう。でもライバルをだすと読者の胃が持たない。(私的にはアリですが)。であれば、恋愛まで発展するのに大きな壁がある関係性にしてしまえばいいというのが一つの解かなと思います。

ひげひろでは社会人の男性とJKという社会的には触れ合うことすら許されない関係で、恋愛まで持って行くところで大きな壁がありました。今回のきみてんでは、アイドルとアイドルファンという関係で壁を作っています。

ありがちな設定であり、他作品であれば割と容易に恋愛関係まで持って行けそうですが、今回のアイドルファンの優羽は普通のファンとは違い、麗という女性が好きなのではなく完璧なパフォーマンスをするアイドル麗が好きです。だから、アイドル活動に間違いなく支障をきたす「恋人」になることなど絶対に嫌だと言います。

適切な例かは分かりませんが、大好きなスポーツ選手に対する私の感情に似てるなと思いました。試合は毎試合追うし、できれば生でプレーするところを見たい。でも友達のような深い関係になりたいとは思わないし、もしそれがプレーに影響するのだとしたら、こちらから断固拒否です。

優羽は表のパフォーマンスさえ良ければ、裏の素行がどれだけ悪かろうが、彼氏を作ろうが構わないと思っています。しかしそれで表のパフォーマンスが悪化すれば、見損ないます。彼氏の存在は間違いなく表のパフォーマンスにリスクを背負います。だからこそ、優羽は自分が大好きなアイドル麗と特別な関係になりたいとは全く思いませんでした。

それに対し、麗もアイドルとしてのプロ意識が凄まじく高く、表のパフォーマンスに妥協することは全くありません。

このように、理想的なアイドルとアイドルファンの関係だからこそ、どれだけ互いに理解を深め好意を持とうと、恋愛関係に進むことは一切ありませんでした。(特に優羽側からは)。

そのもどかしさが堪らなかった!!!

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考察

しめさば先生はあえてヒロインのタブーを犯しているのかなと邪推しました。

ひげひろではヒロインの沙優は泊まる家を求めるために自分の体を売っていました。今回のきみてんではアイドルの麗はオフでは酒・たばこが大好きです。

オタクにとっては発狂もののタブーだと思いますがこれをあえて犯すことにより、ヒロインを創作上の人物ではなく、一人の実在する人間としてリアルに感じることができるような気がします。

その結果、ヒロインの行動にハラハラしたり、目が離せなくなり、他の作品のキャラクターよりも愛情をもってしまうような気がしました。実際、今回のヒロインである麗の破滅的な行動には非常に心を痛めましたし、ひげひろの沙優以外であれほど幸せになってほしいと思ったキャラクターは中々いませんでした。

狙いがあるのかは分かりませんが、ライトノベルの恋愛もののタブーを犯すことにより、ヒロインに対する愛情が逆に深まっているように感じます。

あと考察としては優羽と麗は過去に関係があるんじゃないかという描写があったような気がしますが、割とストレートに匂わせてきたのでミスリードかなとも思います。

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まとめ

今回、きみてんを読んで確信したのは、しめさば先生の作品を私は大好きだということ

麗の目指した目標の一つは今回きれいさっぱり達成しましたし、あとがきからも続きを出すつもりはないのかなと感じましたが、私個人としては理想的なアイドルとアイドルファンの関係だからこそ、恋愛関係に進むことは一切ない二人の今後が読みたいと切に願います。

優羽のトラウマになった女性二人の謎も残っていますし・・・続きが出ないかなあ。


Dai

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