黎の軌跡で懸念事項の一つであったのが、主人公の交代。
2013年から2018年まで(複数主人公の創の軌跡も含めれば2020年まで)軌跡シリーズの主人公としては長く務めていたのはリィン。
軌跡シリーズではもちろん、falcom作品の人気投票でもアドルと共に1位を争う人気キャラクターとなったリィンが交代することで、発売前には黎の軌跡に対してのマイナスな反応もありました。
しかし、公式アンケートの人気投票で主人公ヴァンの順位は男女ともに2位と高順位。
しかも、男だけの投票ではTOP10のうち残りは全員女性キャラの中での2位。女性だけの投票では1位が主人公のヴァンとの関係が印象的だった女性キャラのエレインということで、ヴァンの人気の高さがうかがえます。これらにより主人公の交代は成功したといって良いのではないでしょうか。
個人的にはこれまでの軌跡シリーズの主人公像から変えた部分、そしてあえて変えなかった部分が上手くハマった印象があります。それらの部分を歴代の主人公たちと比較して見ていきたいかな、と。
(ケビン、兄上は除外で)
一番わかりやすい歴代シリーズ主人公との違いは年齢です。
上の画像は各シリーズが始まった時の主人公の年齢。
閃の軌跡までは10代後半の主人公というJRPGでは定番の年齢。しかし黎の軌跡の主人公ヴァンは20代中盤というJRPGの年齢としては比較的高めとなります。
この場合、何が変わるのかというと精神的な成長の仕方。特にヴァンの場合は裏解決屋という周りの組織と対等に渡り合わなければならない立場上、精神的には既に熟している感じがしました。
歴代主人公のエステル、ロイド、リィンはまだ子供ということでパーティメンバーたちと支え合いながらゲームの中で精神的に成長していく過程が見られます。(まあ、ロイドは捜査官という立場上、結構しっかりしてましたが)
しかし、ヴァンの場合は年下の裏解決屋のメンバーの成長を見守っていくのが主な立場。意外に世話好きで、遊撃士・警察・はたまた結社とまでゲーム開始時点で渡り合う地力もあったため、パーティメンバーの中でも精神的に大分上の立場としてまとめていましたね。(閃Ⅲのリィンとも近い立場ですが、リィンはユウナたちと2歳くらいしか離れてなかったので精神的に熟しているとは言いづらかったと思います)
ヴァンも一人で抱え込んでしまう所などもあり、最終的にはパーティメンバーに助けられもしましたが、最後までヴァンと精神的に同じ位置に立てたパーティメンバーはいなかったかなと感じました。(ベルガルドは除く)
メリット・デメリット両方あると思いますが、完全に周りを導く立場を取ったヴァンという主人公は軌跡シリーズの中では新鮮で好感を持てましたね。
ちなみにこの4人の主人公。黎の軌跡時点での年齢は特に変わらないというのが面白い。(多分、ヴァンが若干年上)
ヴァンはスイーツ、車、サウナ(風呂)と私生活の(おっさんくさい)趣味が見えやすかったのも特徴的でした。
エステルは釣りや虫取り、スニーカー集めなどの趣味が会話の中に出ていましたが、ロイドやリィンは仕事や鍛錬が趣味と言ってもいいくらい他には特に何も無かったですね。
一応、ロイドは模型、リィンは温泉が好きでしたが本人がそれを楽しみで生きているかというと、そこまででは・・・。
今回のヴァンのように趣味が本人のアイデンティティとなるくらいに深くかかわってくるのはヴァンという人間を魅力的に感じさせた一つの要因ではないかと思います。人が変わるくらいに趣味について語りだすのは飽きれると同時に微笑ましかったですね。
ちなみにロイドやリィンも釣りが趣味になっていますが、あれはゲームの設定上無理やり趣味にさせられた感がありました(笑)
そういえば、黎の軌跡でヴァンは釣りをしなかったのもちょっと驚いたなあ。
軌跡シリーズだけではないと思いますが、RPGの主人公のゲームが始まる以前の人間関係はサラッと流されることが多いと思います。ゲームを開始してからの人間関係が重要なので。
しかし、ヴァンにとっては黎の軌跡時点よりも6,7年前の青春時代の人間関係が一番重要だったはずです。
エステルにとってはヨシュアとの準遊撃士時代、ロイドにとっては特務支援課を立ち上げた当初、リィンにとってはⅦ組の時。そんな青春時代の一番大事な時期の人間関係を破綻させてしまったのがヴァンという主人公になります。
しかも、当時一番大事だったはずの恋人のエレインを深く傷つけて。(ヨシュアに似てますかね)
そんなことを匂わせながらストーリーが続いていくので、まあヴァンの過去が気になること気になること。ぶっちゃけメインストーリーよりもヴァンの学生時代の方が興味がありました(笑)。
そういう興味惹かれる過去があったこともヴァンの魅力を上げた要因だと思います。
歴代主人公との一番の違いはここかなと。
歴代主人公は組織は違えど清廉潔白な正義側であり、サブクエストに関しても結構善と悪がはっきり分かれていたように感じます。またしっかりと決着をつけていましたね。
しかし、ヴァンの場合は善悪の立場は問わず、あくまで依頼者が困っていることの解決を目指します。そして、問題の完全な解決ではなく依頼者がより良い方向に向かうような手助けをしていきます。
これにはヴァンの「世の中の白と黒の狭間で彷徨っている人を助ける」という主義があり、そこに完全な正義・悪と分ける必要性はありません。
このように人間の汚い部分も飲み込む姿は、逆に親しみやすかったように思います。歴代主人公のように完璧に善な英雄は憧れますが自分と比較してちょっと後ろめたくも感じますし・・・。私だけかな?
ここまでは軌跡シリーズの歴代主人公との違いを見てきましたが、根幹の部分は変わっていないところもあります。
それは結局、困った人を放っておけないお人好しであるということ。
歴代主人公たちもかなりのお人好しでしたが、ヴァンも根の部分はそう変わりませんでした。
発売前、私はヴァンのことをもう少しひねくれた冷たい現実主義者なイメージがありました。
しかし実際には、遊撃士から押し付けられた任務も文句を言いながらちゃんとこなすし、目の前で傷つきそうな人がいたら直ぐに助けに行くし、年下助手たちの成長は優しく見守るしとかなりのお人好し。
挙句の果てには、大量に人を殺したラスボスに対しても同情してしまうなど下手したらシリーズの中で一番優しいのかもしれません。
そのような軌跡シリーズの主人公の根幹の部分は変えなくて良かったなと思います。やっぱり、お人好しの主人公こそ軌跡シリーズの醍醐味ですからね。
特にヴァンの場合は自分ではハードボイルドを気取っていますが、周りは全員がヴァンを単なるお人好しだと知っているので、分かりやすいツンデレみたいになって魅力が更に増しているんじゃないかと(笑)
(ちなみに私がヴァンのことをひねくれた冷たい現実主義者じゃないかと思ったのは、風の聖痕というライトノベル作品の主人公と何故か重ねていたから。全く意識していませんでしたが、そういえばこの作品の主人公の声も小野大輔さんだったなあ・・・)
ということで、長々と書きましたがヴァンが受け入れられたのは、歴代主人公とは変えた部分がユーザーに好評だったのではないかなと。
今回は主人公の魅力という部分に焦点を当てましたが、物語の展開の自由度もヴァンになったことで大分上がったと思います。ですので次回作ではゲーム性としてももう少し自由度が上がると嬉しいかな・・。何というか、街中を歩いていてもゲームのディレクション通りに動かされてる感じがするんですよね・・・
じゃあ、どうすればいいんだよと言われると何も思いつかないですが。
次はヒロインについて書きたいかなあ。アニエスはメインヒロインとしてはシリーズの中でヨシュアの次くらいに強いと思うけど、いかんせん対抗馬のエレインが強すぎるんだよなあ・・・。
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