隣人の女子高生 乃亜がパパ活をしているところを目撃したアラサー社会人の梶野。乃亜が何でもするから黙ってくれと言ってきたのに対し、梶野はあまりにも大人を甘く見ていると考え、大人の怖さを少し知ってもらおうと考えます。その結果、罰として犬の散歩を命じます。そこから2人の関係が始まっていきます。
試し読みで読んだ際に梶野があまりにも簡単に家に上げすぎているのが違和感がありました。
ガガガ文庫の5月刊行の感想でも書きましたが、社会人と高校生の恋愛という半ば犯罪としてみられるかもしれない関係性の際には、社会人側が高校生を受け入れるための相応の理由がないと読者が物語に置いてけぼりになると思っていました。
しかし実際に単行本を読むと、この作品の社会人と高校生の関係やパパ活と言う言葉はあくまでアクセントの一つでしかなく、(実際、周りの登場人物たちに乃亜が梶野の家に入り浸っていることや挙句にはパパ活していることもすぐにばれますしね(笑))孤独で年上の男性との交流(パパ活)で癒しを求めていた乃亜が周りの個性的なキャラクターたちと暖かな関係を築く物語なんだなと感じました。
設定からの予想よりもアットホームな雰囲気の作品でした。
お隣JKと繰り広げる匂いフェチ系ラブコメ。
残業帰りの会社員・梶野了は、女子高生がパパ活をしている決定的瞬間を目撃する。
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彼女には見覚えがあった。同じマンションに住むお隣の娘さん、香月乃亜である。
「親には言わないでください、なんでもしますから」そう懇願する彼女に梶野は、一つの要求をする。
「じゃあ、犬の散歩よろしく」
奇妙なきっかけから始まった二人の関係は、次第に親密になっていき--。
「カジさん、匂い……嗅いでもいいっすか?」
「なんで!?」
匂いフェチのパパ活JKと、お疲れサラリーマンが贈る、新感覚ドタバタラブコメディ堂々開幕!
社会人と高校生の恋愛作品では、社会人と高校生という壁がありながら段々惹かれていくというのが醍醐味だと思いますが、あまりそこは感じなかったかな。
理由としては
①梶野が乃亜を子ども扱いしなかった。
梶野は乃亜からのボディタッチなどに純情に反応していました。
「ガキになんか興味ねぇよ!」
とある魔術の禁書目録 鎌池和馬 J.C.STAF
という風な態度はとりませんでした。ある意味、乃亜を子供として見なしてはいなかったです。(世間体は一応気にしていましたが・・・)
また、乃亜からの接近を過度に拒否しませんでした。乃亜が自分に好意を向けているかもしれないと分かっていて、自分に近づくことを拒みませんでした。保護者としての一面も確かにありましたが、少しわきが甘い気もするくらい乃亜のことを受け入れてもいました。
②乃亜が相手が社会人だということを全く気にせず好意を向けていた
ヒロインの乃亜は、ちょっと頭が単純すぎるチョロイン・・・ゲフンゲフン、好きな人には何も考えず一直線なタイプで相手が社会人ということも気にせずにアプローチを掛けていました。相手が社会人だという壁を通り抜けフープで抜けてくるので社会人と高校生の関係という一種の禁断の関係感が薄れた気はします。
ちなみに普段は攻める乃亜がたまに逆襲を受けた際に照れる場面が滅茶苦茶可愛かったです。やはり図書館戦争の柴咲しかり、普段はからかう方が、攻められると弱いのはギャップ萌えがえぐいです。(柴咲が攻められたのは原作の終盤も終盤、しかも1シーンだけでしたが)
設定とは矛盾しているかもしれませんが、微笑ましい気持ちになれる、安心して読めるラブコメでした。
禁断の関係の設定に反して、周りのキャラクターがガンガン関わってきます。それらの登場人物のアクが強いこと、強いこと(笑)これらの人物の魅力が作品の魅力にもつながっていると思います。
えみり
12歳の梶野の姪。見た目は可愛い小学生ですが中身は精神的にも頭の回転的にも大人。乃亜の勉強の面倒も見ていましたし、なんなら乃亜との関係について梶野にアドバイスさえしていました。
ある時には、乃亜が身に付けているブランド物の小物をみてパパ活をやっているんじゃないかとカマをかけました。そして、それに見事に引っかかる梶野と乃亜。パパ活の事実を知ったえみりちゃんは、
「パパ活の良し悪しは置いておくとして・・・」
「パパ活相手に家まで送ってもらうって危機管理どうなってるの?」
「その現場見られたからと言って、何でもするは軽率すぎる」
「了くん(梶野)も更生するためとはいえ、もっと考えて行動しないと」
と説教を始めます。
この子、(精神的に)ロリじゃないですけど!!!
えみりちゃんは正直、私よりもよほどしっかりしていますね。・・・自分で書いててそれもどうなんだと思いましたが。
ただ、手をつないだりしたくらいで梶野の元カノを気取っているのは暖かい気持ちになりました。また年相応に甘えたい気持ちを持っているところが可愛かったです。
花野日菜子
梶野の会社の後輩。梶野とはサークルの先輩、後輩くらいの気安い関係であり、優しい梶野に恋心を寄せています。そんな中で出てきた乃亜という存在。恋敵として叩き潰そうと心掛け、実際に行ったことがこちら!!!
THE いい人!!
私はこの作品で日菜子さんが一番好きです。ですが、日菜子さんが勝利する未来は一切思い浮かびません!!
何故か別のヒロインのために積極的に負けにいくところは、俺ガイルの結衣やとらドラのあみちゃんを思い出し涙が出そうになります。そういや、上の二人も作品で一番好きだったな・・・。負けヒロインが好きなのかもしれません。
他にも、男性恐怖症のくせに2次元の男には見下されることに興奮する、乃亜の唯一の同級生友達、神楽坂。今作品一番の癒し枠、飼い犬のタクトなど個性豊かなキャラクターたちが孤独だった乃亜と明るい関係を築いていきました。これらのキャラと乃亜の楽しい掛け合いがこの作品の1番の魅力だったかもしれません。
「パパ活」という結構攻めている設定に反して、アットホームな温かい気持ちにさせてくれる作品でした。パパ活はあくまで乃亜の孤独を表すキーワードであり、そんな乃亜の孤独を楽しく癒していくのがこの作品の魅力かなと思いました。わたしとしては今後、日菜子さんが少しでも報われることを願います。まあ、絶対に無理でしょうけど。
一番気になるのは作者の持崎先生が自動車免許合宿を経て陽キャになっているかどうかでしょうか。しかし、私見を言わせていただくと持崎先生は既に陽キャですね。ガチ陰キャの私は見知らぬ人と2週間過ごす合宿になど、例え100万円払われたとしても絶対に行きません。何かの気の迷いで申し込んでしまったとしても、申し込み料が無駄になったとしても絶対に行きません。持崎先生は既に陽キャなので安心してほしいですね。
半分冗談はさておき、次巻も楽しみです。
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