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「映画のように楽しめる」楽園殺し 1巻感想

割と物語のジャンルにこだわらない私ですが(ラブロマンス映画には最初抵抗がありますが、観ると結局はまってしまいます。)映画を見ているようになる小説は身を乗り出して読んでしまいます。何をもって映画のようなんだと言われると困りますが(笑)、文字を読んでいるのに映像が頭の中に流れてくるという感じでしょうか。そういうものに惹かれるのは、「バッカーノ」の影響が多分にあると思います。

「バッカーノ」成田良悟 KADOKAWA

今回の作品は、そんな映画を見ている気分になる作品でした。もちろん、滅茶苦茶スリリングでワクワクするような映画です。

おススメ!

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あらすじ

その塵は人の想いを力に変え、災いを呼ぶ。

人に異能を授ける砂塵が舞う偉大都市。
荒廃した世界で、楽園とさえ呼ばれる偉大都市には、そんな砂塵を力に変え、様々な能力を発現する人々が集う。
そして、その能力を犯罪に使う者たちを取り締まる精鋭部隊<粛清官>が、この街の秩序を守っている。

粛清官ーー射撃の名手シルヴィ・バレト。そして寡黙な黒剣士シン。
とある事件を通じてコンビを組むことになった二人は、人を獣に変貌させるドラッグの捜査を任されていた。

だが、そのドラッグの流通には、粛清官たちの作った悪しき過去が潜んでいた。
現代に蘇った巨大な悪意が、獣の牙となって偉大都市に大きな傷を刻もうとしている。

粛清官に立ちはだかるは、屍者を操る能力者。熱線を放つ能力者。
そしてーー凶悪な獣人を作り出す、異端の能力者。
暴虐の限りを尽くした能力者たちによる死闘の末、最後に立っているのは……

「わたしは、なんとしても完璧を目指さなければならない」
「今回のテロ事件。獣人事件首謀者の協力者と見なしてーー」

「ーー貴方たちを、粛清するわ」

吹き荒れる砂塵のなか、マスクをまとう能力者たちの物語が幕を開ける。

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特長:荒廃した世界で、容赦のない能力バトル

世界自体が荒れています。

数百年前、私たちのいる現代社会が砂塵という正体不明の毒物(正確には万能物質)により壊れ、その毒物に適応した人物、適応するように構築した社会でしか生き残れなくなった世界。(コロナの今ではシャレにならないですね・・・)。ある程度の秩序は構成しましたが、砂塵により特殊能力を得た人間が一定数いることで、「人材」の重要性が上がり、治安は今とは比べ物にならないくらい悪化していました。

主人公のシルヴィもそのような世界で上流階級だった両親を殺されたことで、治安維持を任されている粛清官となり(肩書が怖い・・・)、復讐を目的とします。粛清官として犯罪者たちを容赦なく殺すシルヴィですが、これは復讐心による残酷さではなく、この世界の粛清官としては一般的なことでした。

また上記にも書いた通り砂塵には贈り物と災厄の面があり、贈り物としては砂塵を利用することで能力を得ることができます。意味がある能力を得られるかは完全に運次第ですが、もし得られた場合は一人で3桁の人間を殺せるような力を得ます。この事実だけで治安の悪さが分かりますね・・・。

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魅力1:独特な世界観

世界観が相当独特なことがこの作品の魅力の一つだと思います。

空気中に待っている砂塵の影響により素顔を出せず、常に独特なマスクをかぶります(カボチャとか犬とか猫とか・・・ハロウィン?)。

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一見滑稽のようで、大部分が相手の顔が見えない中で物語が進んでいくのが非常に不気味でした。

そんな世界の偉大都市という最も大きい都市には中央連盟という治安維持、自治組織がありました。組織としてはしっかりとした体系を持っている組織ですが、現代の警察に比べて、はるかに過激で強権を持っています。腐敗していないが、危うい組織というのが私の印象でした。

偉大都市はゲームのFF7のミッドガルのような場所だと感じます。

FF7リメイク スクウェア・エニックス

また、個人的には(細かいところを見れば全然違うと思いますが)ブレードランナーという1982年に上映された映画の雰囲気を思い出しましたね。・・・分かる人少ないか。

ブレードランナー リドリー・スコット
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魅力2:確かな魅力・実力を持つ実力者たち

登場人物たちは実力者ばかり。シルヴィも粛清官としての実力を発揮しています。しかし、周りの砂塵能力を無効化するという特殊な能力により、能力者のパートナーとの連携がうまくいかなかったこと。またシンという優秀なパートナーと組んでも、完璧主義者のプライドにより、劣等感を感じてしまうことなどがあり、焦りを隠しきれない面がありました。このように他者に自分を肯定してほしいというところは、読者が共感して感情移入しやすく、シルヴィの魅力の一つかなと思います。

あと、組織の上層部。完璧な上司とは言えませんが、確かな実力を有しています。特に、ボッチというたたき上げでトップまで上り詰めた人物。

この人物の魅力が滅茶苦茶刺さりました!

トップなのに、ほぼ自分のデスクにおらず、単独行動で情報収集を行い、組織の運営は部下のシーリオに任せています。この時点でトップ失格だと思いますが、その分何かと段取りが必要な組織体制に比べて、圧倒的に早く違った角度から成果を上げます。またトップとしての理念も持ち合わせており、誰も冷遇しないし優遇もしない。人から与えられた称号も気にしない。自分の目で実力を判断し、仕事を任せるといった超実力主義な考えを持っています。

良いなと思ったのは、どう見ても体制側のシーリオが、自由奔放なボッチに対して、実力を評価し上司としての判断に疑いを持っていないこと。

主人公以外に能力が高い人物が多く、物語の緊張感がずっと高いままでしたね。

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まとめ

ちょっとした出番でも登場人物に心惹かれてしまう人物描写と、複数の視点から描かれているのに事件の詳細が分かりやすい構成力。完成度の高い映画を見ているような気分になりました!

あえて不満を挙げるとすれば、滅茶苦茶中途半端なところで終わったこと。

「あれ、何でこんなところで用語説明に入るんだ?」と思って次のページを開いたら、あとがきに入ってて「何で―!」と心の中で叫んでしまいました。電子書籍で読むと終わりが分かんないんですよね・・・。

何度も書いていますが、映画を見ているような気分になった今作。ライトノベルを読んでいるのに久しぶりに映画を見たくなってしまいまう気分になりました。


Dai

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Published by
Dai
Tags: 楽園殺し

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