あの女は不合格ですよ
この3巻で8人の美少女スパイの紹介は粗方終了しました。
スパイのチームメンバーとしても、物語のキャラクターとしても魅力的で、全員の顔と名前をようやく覚えることができました。また、スパイ作品として暗い部分も色々と出てきたのが個人的にワクワクしています。
屍との対決後、クラウスから休暇をもらったティア、モニカ、エルナ、アネットの4人。その4人はアネットの母親だという女性マルティダと出会います(アネットは記憶喪失で分からない)。モニカは反対しましたがティアの後押しによりアネットとマルティダが会話できる場を設けました。親子の関係を取り戻しつつあるように見えた二人でしたが、マルティダが帝国のスパイであることが判明してしまいます。この事実によりチームが崩壊していきます・・・
ティア
黒髪ロングの妖艶な少女。ハニートラップで情報を聞き出すのが得意。また相手の目を5秒間見つめることで相手の真の欲望を探り当てることができる。
(貞操観念以外は)常識人。今回の協調性に問題があるチームをまとめようとして四苦八苦する。スパイでありながら、正義感が強く、甘い判断をすることもしばしばある。
モニカ
顔は整っているが特徴のない少女(と描写されているがイラストを見る限りどう見ても美少女)。いわゆる天才であり、どんな物事も1流以上にこなしてしまう。しかし、その道でトップを取れるほどの才能はなく、そのためスパイという職業に関して他の少女たちよりもモチベーションは少ない。
合理的な考えで、時に冷酷な判断をする。人間の情というものがなさそうに見えるが、その行動は「灯」を守るため。どうやら「灯」内に特別な感情をもつ人物がいるらしい。ティアとの相性は悪い。
エルナ
「灯」内でも最年少の年齢だが、それ以上に幼い精神年齢の少女。不幸を呼び寄せて相手を攻撃するというチート能力持ち。(実際には不幸の予感を感じ取っている?)
灯では良識ある方だが極度の人見知りであり、仲良くない相手との会話は苦手。年の近いアネットには滅茶苦茶いたずらされる。
アネット
俺様口調の一見無邪気な少女。過去の記憶がない。ものつくりの才があり、一度見たものの傷や汚れまで再現して作ることができる。開発の才能もあるが基本いたずら(エルナに対しての)にしか使わない。
暴走するように走り回る子供のようなイメージを持つが、実際には何を考えているか分からず、不気味にも感じる。自身をアネットの母親だというマティルダと出会い、救うか救わないかの選択を迫られる。最近の望みは身長を伸ばすこと!
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上記の紹介で分かるようにこのチームにはまとまりがないです。(2巻のチームとは真逆です。)
特にティアとモニカは帝国のスパイであるマルティダを共和国から逃がすか、それとも通報するかで対立してしまいます。
しかし、ティアは困ったり、弱ったりする姿が凄く魅力的ですね。男性を誘惑する際にはSっぽかったですけど、Mの方が人気がでるのでは?
それはともかく、正義のヒーローを目指すティアと冷酷な判断をするモニカ、そして・・・
最終的にはティアが必死の交渉をすることで、モニカが折れ、マルティダを共和国から逃がすことになりました。
しかし、マルティダには衝撃の事実がまだありました。確かに彼女はアネットの母親でした。しかし、アネットの記憶喪失の原因も彼女でした。彼女はアネットの頭を何度も殴っていたのです。
「気持ち悪いんですもん、あの子」
虐待した子供に良く平然な顔で助けを求められたな、こいつ・・・
私としてはマルティダが悪人ではないかとは疑っていたのですが、アネットとは本当の親子ではないとも思っていました。悪人なのは当たっていましたが、その上本当の親子なのは胸糞悪いです。
しかも、こいつ最後にプレゼントとして工具箱をアネットに渡すのですが、その工具箱に爆弾を仕掛けてきやがりました。悪人というより狂人です。
アネットは工具箱をもらう代わりに全く同じ工具箱を作って、マルティダに渡します。
「お母さんとお揃いです!」
そして、工具箱は爆発しました。マルティダの持っている工具箱が。
アネットは母親かどうかはともかく、マルティダが殺人を犯していることに気づき、悪人だとは見抜いていました。自分たちの好意を無視してそのような行動をとったマルティダに激怒しますが、自分たち情報局の人間が助けた帝国のスパイが共和国人を殺害したと陸軍に知られたら、情報局の立場が危うくなる。そう考えたアネットはティアたちには知られないように暗殺することにしました。
「俺様、大激怒でした!」
実の母親には違いないマルティダを躊躇いなく暗殺する冷酷さ。スパイとしては優しすぎるメンバーが集まった「灯」にあって必要な存在でした。(モニカもその役割をしようとしていました。)
狙い通りにその役割を果たしてくれたアネットを見て、クラウスは複雑な顔をします。しかし、アネットの冷酷さは共和国を守るために必要なピースであり、素晴らしいことだとクラウスは考えます。そんなクラウスにアネットは続けて言いました。アネットがマルティダさんを殺した理由の一つに、あの子は変わってないと言われたことがあると言われたからだと。なぜ、その言葉で怒ったのか?
「俺様、身長が伸びないことが悩みなんです。」
「スパイ教室」という作品を私は大好きなのですが、その理由の一つに程よいシリアスさがあると思います。シリアスすぎると読むのがしんどくなりますし、シリアスさがなくなると緊張感がなくなります。(読む作品のジャンルにもよりますが)。スパイ教室はその調整が凄くうまいと感じられ、緊張感を持ちながらもどんどん読み進めていくことができます。(そこの丁度いいバランスは人それぞれだとは思いますが・・・)
また、恒例のミスリードにも引っ掛かってしまいました(笑)。マルティダ悪人説は何となく予想していたのですが、軍人のウェルタが言っていた「存在自体が間違っている圧倒的な悪」の気配が、帝国からのスパイではなくアネットのことを指しているとは予想がつきませんでした。
毎回、毎回気持ちよく引っかからせていただいています(笑)。