――グレーテ、お前は美しい
現在、4巻の途中まで読んでいる「スパイ教室」。どの巻も面白くて、びっくりしています。
スパイ小説なので読者をミスリードに引っ掛けるのですが、その騙し方がお見事。この作品を読んでいるときはどの巻でも「さあ、騙しに来い!」という感じで読んでいます。
2巻はクラウスというチートスパイがいない状況の場合、少女たちだけでどのように立ち向かうのかというところが描かれていました。
不可能任務を見事達成した新生スパイチーム『灯』。次のミッションは冷酷無惨の暗殺者《屍》の殺害。より過酷な任務に、クラウスは現時点における『灯』最強メンバーを選抜することになり――。
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クラウスだけでスパイの任務をすべてこなしていましたが、体力的に限界が来ていました。そこで新たに出た任務が帝国のスパイ「屍」の暗殺。屍はターゲット以外の一般人でも平気で手にかける厄介な存在でクラウス一人では難しい相手でした。
そこで8人の少女スパイの内、優秀な4人を選抜して連れていくことになりました。
その4人がリリィ、ジビア、サラ、グレーテ。2巻と3巻では1巻の演出上、詳しく紹介できなかった少女たちの特徴を知れる巻でもあります。
リリィ
リリィは1巻でも詳しく描かれた数少ない少女ではありますのでここでは省略。
ドジをやらかすというスパイにとっては致命的な欠点を持っているが、ひたすら前向きな性格(同時にしたたかでもある)をしておりリーダーとして灯を引っ張る。
ジビア
白髪の17歳。自分で稼いだ給料は自分がいた孤児院に全部寄付している。
戦闘面では灯のNo2。スリに関しては天才的な腕前を持っており敵の身に付けているものを大抵は盗める。性格は非常に真っすぐな性格をしており、そういう面ではあまりスパイに向いていない。
サラ
茶髪の15歳。動物たちの調教に優れており、自分の命令一つで動物たちを動かすことができる。
チームで最も優しいが、最も臆病でもある。自分の力に自信が持てず泣き言も多いが、癖のあるメンバーが揃う灯の中で誰とでもいい関係を築ける稀有な存在。
グレーテ
赤髪の18歳。天才的な変装術とともに、作戦立案にも優れている。
常に冷静な対応を心がけており「想定内」が口癖。上記3人よりもスパイに向いているが男性恐怖症により学校では落ちこぼれのレッテルを張られた。
上流階級の出身でありながら、生まれつきの顔のあざが原因で忌避されてきた過去を持つ。脱衣所でクラウスに素顔を見られた時に「美しい」と言われたことがきっかけでクラウスに熱い恋心を抱くようになる。報われる予定は今のところない。2巻のキーマン。
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上記4人は政治家のメイドとして潜入します。3巻を読めば分かりますが上記の4人は力としては飛びぬけてないものの、協調性に優れておりチームとして結果を出せます。
他の4人は壊滅的過ぎましたね・・・
結論から言うと、リリィ、ジビア、サラ、グレーテの4人は屍討伐の任務は任されていませんでした。屍討伐は他の4人とクラウスで行っていましたが、屍には暗殺のパートナーがおりそちらも抑えておく必要がありました。そこでグレーテにクラウスの変装をさせることで、共和国最強のスパイの影をちらつかせ、そのパートナーの動きを抑えることにしました。(ちなみにグレーテ以外の4人も知らなかった。)グレーテはこれ以上クラウスの負担を掛けたくないと必死に行動します。
一方、屍のパートナーが潜伏先のメイド長であるオリヴィア。屍の鬼畜な殺しを目の当たりにしたことで、屍に惚れ、屍の女として暗殺の手伝いを行っていました。暗殺術を教え込まれ、恋人としての愛ももらい、屍に心酔し屍の言うとおりに行動してきました。
オリヴィアとグレーテは想い人のために動くという点で似たような立場でしたが、屍とクラウスも自分に好意を持った女性に対して同じような気持ちを抱いていました。「恋愛感情はない」と。
そこでグレーテを尊重しその愛を拒んだクラウスに対し、自分の操り人形として動かすためオリヴィアの愛を受け入れた屍。その結果、格闘術に圧倒的な差があるにもかかわらず、クラウスに頼るのではなく自分で必死に考えて動くグレーテに、ひたすらに屍の教えたことしか行わないオリヴィアは負けてしまいます。
どれだけ屍に依存していたかは終盤にクラウスが(スパイとして捕まった以上)覚悟はできているなとの問いの返答に良く表れていました。
「そんなの教わってない。ローランド(屍)が教えてくれなかった・・・。私を愛してくれたのに」
1巻ではあくまで少女たちの訓練と潜入してからの敵との戦いというところに焦点があり、2巻以降の方がよりスパイらしい話になってきました。
スパイ教室は各巻でテーマというものがある気がします。2巻で言えば、スパイの世界においての男女の恋愛について語られていたように思います。3巻では「家族愛」かな。そういうテーマが明確なほうが個人的には読みやすくて面白いなと思いました。
あと、この巻で一番スカッとしたのは屍がボコボコにされているのをオリヴィアが見た場面。「(クラウスこそ)私のライバル」「退屈な時間を終わらせてくれる存在だ」とか抜かしておいて、特に描写もなくボコボコにされていました。残忍な手口で人を殺していったこともあり、言葉は悪いですが「ざまあみろ」と思ってしまいました。
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