このクラウスという男性、既にご成婚されているようですが……
本編の1巻~2巻の間のお話。
クラウスに(任務の都合上の)妻がいる!!!しかも、灯の中にその相手がいる!!!
クラウスに対して特別な感情があるかはさておき、花嫁になれば任務中に豪華ディナーが食べられる。それはズルい!!と(主にリリィが)主張し、そんな特権を得たのは誰だー!!!と犯人探しが始まります。
そんな中でクラウスとの個人的なエピソードをそれぞれが語りだすという短編集。
ショートストーリー大好きな私としては非常に楽しめました。
本編ではシリアスな場面が多いスパイ教室で、単純に灯のメンバーがキャッキャッしているところは心穏やかになりましたね!
スパイの極秘な姿を目撃せよ! 珠玉の短編集がついに登場!
「――僕は『灯』の誰かと結婚している」クラウスから告げられた衝撃の一言。そして婚約者は謎のまま『灯』メンバーで花嫁を巡る戦いが勃発する…!? 本編では描かれない、少女たちの日常を目撃せよ!
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グレーテがクラウスとの婚姻届けを出すところから、クラウスが結婚していると判明。まず、婚姻届けを出しているところからツッコミたいですが、グレーテなのでひとまず無視。
クラウスは特に隠すことなく(あくまで戸籍上の)結婚の事実を認め、その相手が灯の誰かであることも明かしました。
その人物は隠したがっているようなので詮索はやめるように言いましたが、そこで止まるようなおとなしい連中ではありません!
誰が花嫁なのか(そして、美味しいディナーを食べやがったのか!)、裁判をはじめ、クラウスとの個人的なエピソードを各々に語らせました。
時期は灯が最初の不可能任務をこなす前、クラウスを倒すという訓練が始まった当初。つまり―――クラウスという人間をスパイとしては認めているが教官としては認め切れていない頃。
ジビアが街に出たクラウスが持つ機密文書を盗もうとした際に、ある物売りの女の子と出会います。結論から言うとその女の子は子供で構成されたスリ集団の一人でありクラウスとジビアを罠に嵌めて、スリ集団のアジトにおびき出します。そこには、親のいない捨て子を集めて犯罪集団を作り、私腹を肥やしていたゲス野郎がいました。警察官さえ買収して、好き放題やっています。
まあ、子供に騙されるような軽はずみな行動はクラウスはもちろんジビアもするはずがなく、あえて捕まり、アジトに潜入。ゲス野郎の小物を空気を吸うより容易くぶちのめします。
ジビアは自分の親が似たような人間であり、その親から兄弟たちを救った背景がありました。そのことを知っているのか、クラウスは
「ジビア、いつか故郷の子供を救える日も来るさ」
と声を掛けます。その時に、シビアはクラウスが自分たちを気にかけていることを感じ、良いボスなのかもしれないと思いなおしました。
ジビアは性格が真っすぐなので、クラウスへの感情が分かりやすいですね。グレーテと張り合いたいとも思っていないが、クラウスのことは満更でもないという感じでしょうか。
これも時期的にはクラウスを倒す特訓をしていたころ。
クラウスを倒すために、屋敷のあっちこっちがボロボロになっており、もはやけが人すら出そうな状態。灯のメンバーは気になりながらも、まあ良いかで済ませていましたが、サラだけは危ないと感じ夜中にコソコソと修繕していました。
1人でやる背景には、自分は役立たずだという思い込みがありました。サラはスパイを目指した背景が家族を金銭的に支えるためと薄い(と自分で感じている)ため、他のスパイ候補生に対して引け目を感じていました。能力的にも動物を操るのに長けているだけだと(十分すごいですが)。
クラウスは、このようなサラ一人にだけ負担がかかる体制は良くないと判断し、自分が作った食事を食べさせることを餌に、灯のメンバーに屋敷の修繕を利用した勝負を持ち掛けます。灯はこんな子供だましのような誘いに―――見事に乗ります。・・・前から思っていましたが、リリィは論外として、灯は食い意地張りすぎでは?
まあ、いつものごとく見事に負けた灯。しかし最後の勝負ではサラが動物たちを操りクラウスといい勝負をしました。このことで自信がついたのか、サラは灯内で積極的に発言するようになり屋敷の修繕の当番制も導入することに成功しました。
サラが少し自信をつけることに成功したエピソード。
また、話の大筋とは関係ないですがクラウスが子犬とじゃれあおうとして噛まれ痛がるシーンは、唯一灯がクラウスにダメージを与えたシーンではと思います。
こちらはちょっと日付が進み、不可能任務の準備をしていたころの話。
モニカは潜入先の情報を仕入れるべく、そこで働く電気工事士の息子に取り入ろうとします。見事に取り入ったモニカですが、その電気工事士をスパイ容疑で帝国の情報局が捕えようとしてきました。
元々、冷静な判断が売りの彼女はその親子二人を見限り逃げ出そうとしますが、何故か足が止まります。
モニカは灯では毛色が違う人物です。ほかが一点突破型の尖った能力を持っているのに対し、彼女は満遍なく能力が高く、スパイとして高い才能を持っていました。そんな彼女が落ちこぼれとして扱われていたのは、単にやる気がなかったから。彼女は高い才能は持っていましたが、最高の才能は無く、スパイとしての自分の限界を知り、情熱を無くしていました。
そんな彼女でしたが、灯で自分より弱い周りが必死に任務に取り組むのを見るうちに心の底に小さい火種が出ていました。怒りなのか、使命感なのか。よく分からない感情に突き動かされ、親子二人を助け出すことに成功します。
(元々、クラウスが指導下手なのもありますが)モニカはクラウスの動きを自分なりに解釈し、実戦で活かしていました。このあたり、こちらも師弟関係ができているのかもしれません。
最後に、不可能任務が終わり、クラウスが仕事、灯には休暇を与えられていた時の話。
説明するまでもないほどクラウス大好きなグレーテが、クラウスが好きなミートパイ店の廃店危機に立ち上がります。
廃店危機の背景には大手食品メーカーのぼんくら社長の謀略がありました。プロのスパイである灯には敵にすらならない相手でしたが、だからこそ正面切って戦うわけにもいかず多少の四苦八苦がありました。
そこはともかく目立ったのは、やはりグレーテのクラウスへの愛情。クラウスの好きな味を無くしたくない一心で動き、クラウスが書いた意味不明のミートパイレシピも正確に読み取ることに成功。
クラウスもグレーテの愛情に多少応えるために、らしくない気を回してグレーテと一緒にミートパイを食べようとしました。他の灯の少女たちが、そのことに気づいているのも含めていじらしくて良かったです!
と、そんな話をしても結局花嫁が分かりませんでした。そこで、もう勝負で今後の花嫁を決めちゃいましょう!と強引な形で花嫁ロワイヤルが始まります。
真相から言うと元々の花嫁はジビアであり、もちろん成り行きの花嫁でした。今回のロワイヤルにも参加するつもりはありませんでしたが巻き込まれてしまい、最終的にはグレーテと真剣勝負をすることになりました。で、結論を言うと、勝ったのはリリィ。気絶している間に他のメンバーが全員「降参」してしまい勝つという、本人すらも困惑の勝ち方でした。
というわけでクラウスはリリィを戸籍上の花嫁とし、リリィはひたすら罪悪感を抱くという誰も得しない展開に。(しかも、ディナーは無し!)
そんな中でふとリリィはクラウスに質問します。
「先生ってみんなのことをどう思っているんですか?」
それに対し、クラウスは
「僕はお前たちの誰とも恋をしない──ただ、幸福になってほしいと強く願っている」
と答えます。年相応の青春を謳歌するべきだと。以前から思っていましたけど、クラウスは指導者としての立場を強く意識しているようで、灯のメンバーとの距離感も慎重に測っているようです。
リリィは、自分たちを守るべき子供として大事にしようとしているクラウスにむけて、「それは違う」と言いました。
「もっと大人扱いしてください。スパイとしても、一人の女性としても」
その言葉にクラウスは虚を突かれます。この言葉にも影響され、次の不可能任務、屍との戦いに彼女たちにも協力させることを決意します。
しかし、リリィはごくたまに大人びだ言動をしますね・・・。そこが彼女の魅力であり、個人的に何となく怖いところでもあります。
本編では描かれなかった、クラウスの指導者としてのスタンスや想いと灯のメンバーがどのようにしてクラウスと信頼関係を築いていったかを描いた短編集。
灯の仲間たちが仲良く青春している姿を見れたのも、楽しかったですね!
まあ、次の巻では裏切り者出るの確定何ですが!
・・・6巻が楽しみであり、怖くもあります・・・・。
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