俺があんたを—幸せにしてやる
ヒロインの闇堕ちを予期できる能力を本から得た主人公のリオ。ヒロインの闇堕ちの原因を推察し、ヒロインを「幸せにする」ことで闇堕ちを防ごうとしていきます。
闇堕ちからヒロインを救うという話の目的が明確で分かりやすく、凝った設定がいくつもありながら読みやすい物語でした。
個人的にはヒロインの一人であるシャルナが凄く魅力的だったので、リオとシャルナの絡みをもっと見たかったです。
未来を告げる魔本を駆使し、少女たちのバッドエンドを回避せよ!
少年リオが手にしたのは未来を告げる魔本。そこに記されていたのは自らの仕える皇女シャルナにこれから降りかかる悲劇と、悪しき《首切り姫》への変貌という絶望の未来で――予言の力を以て少女の悲劇を打破せよ!
amazon
予言の書を手に入れたリオは、ヒロインが将来数多の人を殺す罪人となることが分かるようになります。その原因は闇堕ち—つまり人から裏切られたり、心に深い傷を負うことで力を得てしまい、暴走することにあるようです。そのヒロインの闇堕ちを防ぐため、リオには闇堕ちの原因を排除し、ヒロインを幸せにすることを求められました。
物語に良くあり、そして1番盛り上がるシーンの一つである不幸に向かうヒロインを主人公が助けるという展開をある種システム化して分かりやすくした印象です。
私的には闇堕ちから救うことでヒロインとの特別な関係を築くのが一番の楽しみなのですが、築いたばかりの今の段階ではこの物語の魅力は出し切っていない?ような気がしました。魅力的なヒロインを次々に出していくのか、今いるヒロインで物語を展開していくのか。どちらにせよ、これからのほうが面白くなりそうな気がします。
個人的には男勝りでありながら初心な乙女のような反応をするシャルナが好きなので出番を増やしてほしいなあ。
魔法というものがある中世的な世界観。ファンタジーものにありがちな設定ですが、実はこの世界は私たちがいる現代のはるか未来の設定。PSYという能力に目覚めた人間が「闇堕ち」してしまい、世界を滅ぼしたあとの話となります。またPSYについても人間が本来持つ代謝からエネルギーを得る機構のほかに、新たな機構を得た人間が得た力と定義しており、そのため本来の代謝の能力が落ち寿命が短くなったという設定もありました。
どちらかというとSFを読んでいるような気分でしたね。
面白かったのは魔法という概念は科学的に証明できる超能力だというところ。とあるシリーズでいう魔術は実は学園都市の超能力だったんだよというところでしょうか。(例えが分かる人にしか分からないな(笑))
主人公のリオは有能なのかそうでもないのかよく分からない主人公でした。
茶会での爆破事件では、茶会にいた200人の配置図を完璧に記憶し、シャルナだけを狙った爆破だったことを見抜きました。また、予知で見た未来と現在の状況から真相を突き止める推理力は見事であり名探偵のようでした。
しかし、なんというか個人的にズレている印象を受けました。
近衛兵のリオが守るはずの皇女シャルナに対してほぼ初対面からのため口はびっくりしました。この辺りは独特な世界観もあるかもしれませんが。
あと、変なところでとんでもない方向に行動をします(笑)
見たものを焼くという恐ろしい魔法を使うアイスリン。リオ達は、敵対こそしていませんでしたが会うのを拒否されている状況。しかし、アイスリン偽物疑惑が出てきたため、直接会って問いただす必要がありました。そこでリオは下記の行動を起こします。
①真夜中、外に出てきたアイスリンのランプを刀剣を投げて消す
②布を顔にかぶせて、ひもで結ぶ。
③押し倒して、馬乗りになる
・・・完全に暴漢ですね。
リオも途中で気づき、結局布を取ってから普通にアイスリン偽物疑惑について聞くことになりました。(なおさら、上記の行動は必要なかったのでは・・・)
リオは天然というか、妙なところで一般常識がないというか。
重要なところでは見事な推理力を見せる分、何か不思議な魅力の主人公でした。
闇堕ちからヒロインを救うという展開を軸に、SF的な凝った設定と予知した未来と現状から推理する要素を付け足したような物語(もちろんバトルもあるよ!)。悪堕ちする過程が描かれるのでヒロインは人物背景が深く分かり魅力的だったのですが、主人公のリオに関してはちょっと掴みづらいところがありました。
個人的な好みとしては、リオにはこの調子でヒロインをガンガン救っていってもらい、少しギスギスした関係を作ってほしいなと思いました(笑)。
|