人間と人間に限りなく近いロボットが近づき、離れを繰り返して絆を育もうとする近未来SFの2巻!
相変わらずの緊張感のある映画の映像が流れるようなサスペンスに、作りこまれたSF設定、そして互いに大事に想いながらも容易には心が近づけない人間とアミクス(ロボット)のドラマ。やはり完成度が高い作品でした。
今回はハロルド誕生の秘密が明らかになり、どの段階までくればAIの反乱が起きる可能性があるのかにも1説投じた形の作品に感じました。
ネタバレありです。
★第27回電撃大賞《大賞》受賞のSFクライムドラマ★
哀切怒濤の第2弾開幕――!!再び電索官として。歩み出したエチカに新たな事件が立ちはだかる。RFモデル関係者連続襲撃事件――被害者の証言から容疑者として浮上したのは、他ならぬ〈相棒〉ハロルドの名前だった。
「きみの思考に入り込めたらいいのに」
「あなたに潜れたらどんなにいいか」ままならない状況に焦るほど、浮き彫りになる<人>と<機械>の絶対的違い。埋められない溝に苦しみながらも捜査を続ける二人を待ち受ける衝撃の真相、そしてエチカが迫られる苦渋の選択とは――!
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人間を形作られたロボット、アミクス。その中でも高性能なRFモデルアミクスの1体が人間への敬愛規律を破り人間を襲ったことで、同じRFモデルのハロルドに対しても人間への安全性が疑問視された。そんな中、RFモデル関係者を次々に襲う事件が発生し、その容疑者としてハロルドが浮かび上がった・・・というところから始まる今作。
1巻に比べてお互いに距離を縮めようとするエチカとハロルド。しかし、そこには人間と人間に限りなく近いながらも全く異なるアミクスという存在の間にある壁がありました。そこから事件を通してハロルド誕生の秘密と、他のアミクスとの相違点が明らかになります。
人が人を作ろうとしたときに、それはどういう存在なのか。また、その危険性について考えさせられる物語でした。
エチカとハロルドは対等な関係を追い求めていきながら、結局今作ではその答えにはたどり着けませんでした。その関係性が今作の魅力かなと思います。
自分が大切に思う存在から信頼してほしい、頼ってほしいと人間らしい思考をするエチカ、それに対しエチカを大切に想いながらも事件解決のためには秘密裏に利用することに躊躇がないロボットらしい効率的なハロルド。
お互い分かりあいたいと思いながらも、全く異なる存在であることも認める二人。それでも対等な存在であることを目指しますが、その結論は「互いに歩み寄る努力をしよう」という曖昧なものになりました。
二人に対して後ろ向きな朗報があるとすれば、今作の事件の中心となったレクシーとエイダン。彼女らは学生のころから互いを大切に想っていましたが、結局「対等」な関係には最後までなれませんでした。エチカとハロルドは人間とアミクスという関係がお互いを対等にできないと考えていますが、人間同士でも対等な関係を作れないのであれば、その前提は少しもろいものになるのではと思います。それとも人間同士ですら対等になれないなら、人間とアミクスでは到底無理だという考え方もあるかもしれませんが・・・。
AIの反乱は昔からSFではよくあるネタだと思います。
この作品では普通のAIロボット、アミクスでは反乱は起きないとレクシー博士は語っています。理由はそもそも人間を攻撃するようなプログラムは入れていないから。「人間を攻撃してはいけない!」ではなく「人間を攻撃するって何?」という感じが正しいのでしょうか。決まった行動を人間からプログラムされたアミクスでは自発的な反乱はありえないのです。それを世間には分かりやすく伝えるため「人間への敬愛規律があるから攻撃できない」と説明しています。
しかし、ハロルドも含めたRFモデルは違います。人間の脳神経回路、つまり脳を完全に作り出して搭載したものになります。だから彼らには「人間を攻撃する」という選択肢はありますし(つくりだせる?)、やろうと思えばやれます。(ハロルドがエイダンに対して攻撃するか迷うことができる場面でも明らか)。
AIが反乱を起こすには、人間が人間を人工的に作り出そうとするくらいの禁忌が必要だよ、と言うことでしょうか。
そうして生み出されるのは、人間か、怪物かはともかく。
エチカは最後にハロルドのことを助け出しましたが、その判断を「間違っている」と断言していました。個人的には、今のところ恩人を殺した相手以外には特に危険性が無いように見えるハロルド。彼の存在を許すことのリスクがどこかで明らかになるのでしょうか?
物語的にはエチカの過去とハロルドの過去の二つが判明し、結構テンポ良く話が進んでいる気がする「ユア・フォルマ」。3巻でハロルドの復讐相手が出てきてもおかしくない気がしますが、もう1つ2つ展開があるのかな?
人間とアミクスが対等な関係を築けるのか、そもそも対等な関係とは何なのか。次巻も楽しみです。
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