ダンダダン 第156話 感想 このくそったれな世界から命を守るという反抗。

ダンダダン

弟が死んだ時と同じ大雨。

弟が死んだ川を眺める頭間。

ふと気づくと、そこには過去の弟や自分のように複数人にいじめられていた小学生の姿がありました。

その小学生は、母親が作ってくれたカエルのイラストが付いた体操着袋をからかわれているようです。

出典:「ダンダダン」 龍幸伸 集英社

このカエル・・・ゲームの中に出てきたカエルと似てるような・・・でも、あのゲームは頭間が作り上げたものですよね・・・気のせいでしょうか?

奇しくも頭間の足元には自動車に踏んづけられて体半分が無くなっているカエルの姿が。

そのカエルを見つめて、頭間は走ってくる電車の前に飛び込んだ母親を思い出します。

自分の大切な人を思い出させる二つの光景を前に、頭間はそっと立ち去ろうとしました。

出典:「ダンダダン」 龍幸伸 集英社

これは、頭間のこの世界への諦めを示唆してるように見えました。

「もう勝手にやってくれ。知ったこっちゃない」と。

今の頭間なら、少なくとも虐められている小学生は助けに行きそうな気がしますが。

しかし、そんな諦めている頭間も振り返ざるおえない事態が発生します。

虐められていた小学生が、同級生によって投げられた自分の体操着袋を追って川に飛び込んでいました。

増水した川に。あの時の頭間の弟と同じように。

その時、小学生を助けに、迷いなく川に飛び込んだのは警官。

彼は「生きろ!」と心の中で叫びながら、おぼれている小学生の顔を水面から出そうと必死になります。自分の身は全く顧みずに

この警官の行動は、助けられなかった自分の娘に対する罪滅ぼしなのか。

個人的には、そんな後ろ向きな姿勢ではなく、この理不尽な世界に対して命を救ってやる、戦ってやるという警官の意志を感じましたが。

一方、警官まで命の危機にさらされたことで、頭間はよりパニックになります。

彼の脳によぎる言葉は「死なないでくれ!」ではなく「殺さないでくれ!」

これは特定の誰かに向けたものではなく、この世界そのものに向けた言葉。

まさに頭間雲児の敵は世界なんだな、と感じた場面でした。

そんな彼の前に現れたのは、死んだ弟、いや、アンブレボーイ。

アンブレボーイに傘という名の世界と戦う力を受け取った頭間は二本の傘で小学生と警官を助けます。

出典:「ダンダダン」 龍幸伸 集英社

初めて傘の異能を使ったのがこの時、というのも驚きでしたが、傘が二本あるということにもびっくりしました。

あれ・・・? 頭間はゲームでアンブレボーイの姿になった時に傘を二本も使ってましたっけ?

何はともあれ、小学生も警官も助けることができた頭間。

頭間は息を吹き返した警官を、警官は自分を心配そうに見つめている川に飛び込んだ小学生を見て思わず口にします。

出典:「ダンダダン」 龍幸伸 集英社

それは、この不平等でくそったれな世界への勝利宣言。

頭間が初めて世界に勝った日となりました。

ということで、今回はここまで!

なんともまあ・・・読んでいて不思議な解放感に包まれる回となりました。

世界に対する反抗として散々暴れまわっていた頭間が、人の命を助けることによってはじめて世界に一矢報いることができたと感じられるのは・・・うまく言葉にできませんが、良かったなあと心から思います。

それこそ最後の「よかった・・・」というセリフが私の胸に刺さりました。

さて、この話で私の中に二つ疑問が残りました。

一つは頭間がこの時点で異能を使用できたということ。

あの箱庭ゲームに参加するために、謎の男から異能を貰ったという認識だったので・・・頭間が過去に異能を使用していたのはびっくりでした。頭間は警官を助ける時に異能を使ったという認識が無かったのでしょうか?

もう一つは、世界に一矢報いた頭間は現状でも世界に対する破壊衝動が残っているということ。

警官を助けたくらいでは、世界に対する憎しみは消えることなんてできなかったのか。それとも、ここからまた何か事件が起きるのか。

警官の前から突然姿を消した事実と踏まえて気になるところですね。

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