誇り高き騎士道精神を貫く女騎士が、乱れた国家に翻弄されていく物語。
この女性騎士が美しく、格好よく、優しいので周りの女性が否が応でも惹かれていきます。男性読者が読んでも面白いと思いますが、女性読者の方も楽しめる作品なのかなと思います。
あらすじ
暗黒時代の王国を舞台に、少女たちによる戦いがいま始まる。
かつて魔術師が隆盛を誇り、その後、「反魔素材」の発明で、大きく衰退を見せた世界。残った数少ない「魔術師」である少女・オットーは、旅のさなかにある一人の剣士と出会う。
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その者、「光なき」眼帯の女性剣士。
名を『ジークフリーデ・クリューガー』。
両目とも見えぬはずが、一瞬で野盗の群れをなぎ倒すその力に、「新種の魔術」の片鱗を見たオットーは、その力を研究したいという一心で彼女を追う。それが、身も心も《沼》に落とすことになると知らずに……。
混乱の時代に出会った少女二人の、数奇な運命を描く。
特長:女性同士の憧れ、特別な感情
世界観は史実の中性ヨーロッパに近い雰囲気。永遠の繁栄と安寧が約束されていたリーベルヴァイン王国で優しき王女が最悪の暴君に変貌。その王女と親しい仲だった美しき親衛隊長ジークフリーデは反逆者とされ両眼を失ってしまった。そこに世界中の魔術を集めている僕っこ少女 オットーが国を訪れるところから始まる物語。史実の中世ヨーロッパと同じでかなり血生臭い世界観となっています。(史実の方がヤバいですが・・・。人間狩りスポーツとかやってたしな・・・。)
上記から分かる通り、主な登場人物はすべて女性。それらの女性がジークフリーデの美しく、強く、儚い騎士道精神に惹かれて行動を起こしていきます。
分かりやすく言えば、「百合」ですが、男の自分でも女性キャラがジークフリーデに憧れるのは分かります。美しいほど真っすっぐで優しく、不器用な心はそりゃ惹かれるわなと思いました。
あと、オットーを女性にしたのが良かったなあと思いました。オットーは悪い子じゃないんですけど色々と不注意でちょっと空気が読めないところがあるトラブルメーカーという印象で、ちょくちょくジークフリーデの足を引っ張ります。
女の子なので苦笑くらいで済んでいますが、これが男だったらめっちゃイライラしてたような気がします(笑)
あとは女性だからこそ、ジークフリーデの心に深く入り込めた部分もあったと思います。
魅力:誇り高き女性騎士の生き方
ジークフリーデの生き方は騎士道そのもの。守るべきもの(陛下、国、民はもちろん。国を訪れた異国のものも)を守るために自分を犠牲にすることすら厭わず、国から反逆者の汚名をつけられても国のために尽くそうとします。
一方、頑固で融通が利かないところもあり、例え幼い子供との小さい約束でも、守れなければひどく動揺し落ち込んでしまいます。
読み進めるほど、ジークフリーデの魅力に引き込まれていき、その分彼女の境遇を憂いてしまうのがこの作品の魅力かなと思いました。
考察?:ロザリンデの豹変
心優しき王女が何故暴君になってしまったのか。騎士団副団長のイザベラの回想から、かなり急激に変貌したような感じを受けます。
ヒントになるのはオットーが話した昔ばなし、「わるいおうさま と いいおうさま」かなと。
この話では圧政を強いていたわるいおうさまの良心と悪心を分け、悪心を持ったおうさまを放り出してしまいます。そこで優しき民とふれあい、民の暮らしの厳しさを知り改心していくお話。
ロザリンデはこの話の逆なのではと思いました。
悪心が今の王女、そして良心が酷いやけどで記憶を失ったラーラとなっているのではないかと。まあ、そう仮定すると、色々と疑問点もいっぱい出てきますが・・・。
まとめ
ジークフリーデという少女を通じて、騎士道精神を描いた作品。ジークフリーデの魅力とかロザリンデの豹変の真相は何かとか、思うことはたくさんありましたが、最後まで読み切った感想は1つ。
何も解決していないバッドエンドなんですが、どういうこと!?
ライトノベルの1巻で物語が中途半端に終わることも珍しければ、バッドエンドも珍しい。すぐに続きは出るとは思いますが、後味はかなり悪い読後感でしたね・・・。(物語自体は面白かった!)
ジークフリーデが可哀想で、女騎士という設定なのに変な妄想をする気にもなれない・・・。
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