☆3.4
1巻が野蛮で有能な傭兵が暴虐の限りを尽くした紙に愛された才能を持つお嬢様に転生したギャップを楽しむ物語だったのに対し、2巻は転生した傭兵が学園生活を楽しむことにフォーカス。中身が男のお嬢様が、王国の姫様に強引にアプローチを掛けられたり、自国の王子にメイド服を着させて復讐したり、新たなヒロインと新たな絆を作ったりとらしくない青春を過ごしていきます。2巻でミレーヌ(転生後)の守りたい場所を作りたかったのかなと邪推して見たり・・・。
ただラノベらしい青春を遅らせるためにちょっと世界観が崩れたかなという感じはしました。ミレーヌたちが通っている学校には日本らしい学園祭のようなものがあったり、そこで主要人物にメイド服を着せるためにメイド喫茶が数年後には流行ってくるという設定が出てきたり。「そんな世界観だっけ」という設定が出てきて、少し戸惑いました。個人的には独自の世界観を見せて欲しかったかなあ。まあ、アルベールの可愛いメイド服姿が見れて満足でしたが。
そんな青春の中でも敵組織「月の神々」は攻撃を仕掛けてきます。この組織、新たな神を信仰し世界を壊そうとするありがちな敵組織なんですが、信仰する唯一の教義が「無秩序」。カオスな破壊を信仰しており秩序なんてぶっ壊そうというのが目的となっていますので、「組織としてそんなのありか?」というツッコミを入れたくなるような、ある意味面白くて予想が付かない敵組織となっています。
そんな月の神々から送られてきた今回の刺客がヴィクトー。今回だけの使い捨てにするにはあまりに惜しい魅力的な敵キャラでした。「月の神々」の幹部ではありますが、あくまでカオスという教義が自分の追求する美に合っているというだけで、信仰心はかなり薄いです。最後のミレーヌとの戦いもあくまで戦いの中での美にこだわり、勝利にはこだわりませんでした。イカれたキャラではありましたが物語として読む分には面白く、今回だけで退場させるのはもったいないキャラでしたね。赤石先生もそう思ったのか、この後も出てきそうな雰囲気で退場していきました。面白いキャラクターだっただけに最後に主人公たちと絡んでくる展開がかなり強引だったのはちょっと勿体なかった気はします。
物語全体としては学園ものと世界を救うダークヒーローものが中途半端に混ざり合ってしまった感じがしました。個別にそれぞれのジャンルでみれば面白いのですが、それが単に足されただけで相乗効果はあまりなかったかなと。その原因の一つとしては物語全体としてあんまり学園ものを絡める理由がないことがあるのかな? ミレーヌが月の神々と敵対する中で学園に通う理由があまり明確ではない感じがします。世界的な学園ものとして「ハリー・ポッター」がありますが、あれは学校に通うことでハリーのルーツや敵の謎、そして魔法界のことをハリーと一緒に学んでいく楽しさがありました。そのように物語に対しての学校という要素の大切さがイマイチ明確ではないので、3巻ではその辺りが明確になってくると嬉しいです。
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