「あなたのことならなんでも知っている私が彼女になるべきだよね」                             感想

著 藍月 要
イラスト Aちき

醜い恋だと、わかっています。
だけど神さま、それでもわたしはどうしてもー
あの人がほしい。
 

みなさんはヤンデレは好きでしょうか。                          この作品のヒロインはヤンデレです。(もしくはストーカー)                そして、私はこの作品のヒロインが2020年読んだライトノベル作品で一番好きです。    でも私はヤンデレは好きではありません!(矛盾)      個人的には暴走するキャラクターよりも共感できるキャラに好感を持ってしまうためヤンデレは あまり好きになれませんでした。しかし、この作品のヒロインはあきらかに異常な行動をとりながら丁寧に心理描写をしているため、めちゃくちゃ共感できました。というかめちゃくちゃ可愛かったです。めっっちゃ可愛かったです                            丁寧なところは作品全体に見られ、すごく物語に没入できる作品でした。           2020年、個人的に一番おすすめな作品です。                      個人的に感じた作品の特徴としては下記になります。

・会話のテンポがいい、笑える(漫才みたい)
・気持ちが共感できるヤンデレ
・ギャップがかわいい
・話の流れが丁寧⇒伏線がしっかり張られている。
・各人物の背景がしっかりと書かれ、言動に説得力がある。

ここからはネタバレありでキャラクターについての感想と作品の細かいところの感想を書いていきます。(ネタバレ注意)

九条 紅 (ヒロイン)
「彼についてのことならば・・・このわたしが、世界でいちばん詳しいんだもの」
では彼女がしたことをざっと挙げます
・主人公(空也)の顔を盗撮する
・空也のスマホにウイルスを仕込む
・空也の位置情報をいつでも把握
・空也の検索項目をいつでも把握
・空也が欲しがってたスマートウォッチを格安でネットオークションに出して買わせる。
 (もちろん細工済み)
・スマートウォッチを使って空也の体調をいつでも把握
・学校の合いかぎ(3Dプリンタで自作)を使って盗聴器を仕掛け空也の会話内容を盗聴

やべぇよ・・・やべぇやつがいるよ
彼女は理系科目で全国模試1位になるほどの天才。
その頭脳を使って、空也の情報を何が何でも抜き取ろうとします。
いまだかつて、恋愛対象の情報をここまでハイテクに
抜き出そうとするヒロインがいたでしょうか。
ぶっちゃけ、やってることは外国のスパイが敵国の情報を抜き出そうとしているレベルです。

私が感じた彼女の魅力はギャップです。
合理的に考えることが好きな彼女は、基本合理的でない人付き合いに興味がもてません。
だから人の名前も覚えません。クラスメイトの女子に仮としてβ、γとつけたときには引きました。
(せめてa,bって付けてあげて・・・)
そんな彼女は空也が描いた絵を見て、無意識に閉じ込めてた孤独を掘り返されてしまいます。
そこから空也に興味を持ち、恋心を抱くようになるのですが・・・
恋心を抱いた後は非合理な行動ばかり繰り返し、そこがものすごくかわいいです。
さらに空也に非合理な行動を指摘されたときに早口で長文を話した際には萌え死ぬかと思いました。

あと、非常に特徴的なヒロインですが育った環境自体は普通の家庭なので
割と俗っぽい言い方をするときがあり、そこがまた可愛いです。
「高くなぁい」 「え、うそお」
と地の分であった時には萌え死ぬかと思いました(2回目)

また、自分が行っていること(ストーカー行為)に罪悪感はしっかり抱いていて
自分は悪い人間だと思っているところに
ヤンデレ気質だけど共感できる部分がありました。
(ストーカー行為をやめるつもりは毛頭なさそうでしたが・・・)

個人的にストーカーの目的は相手の情報を知ることであり、付きまとうことではない
という地の分にちょっと納得しました。

吾道翠香 (ヒロイン)
「たとえ何年かかっても、絶対にあなたを私のものにする。絶対に、絶対に」
では彼女がしたことをざっと挙げます
・主人公(空也)を守るために性格を変える
・空也を守るために弓矢くらいなら飛んできても掴めるくらい鍛える
・容姿、スタイル、コミュ力を徹底的に鍛え、空也の周りの女性をあきらめさせるようにする。
・地域の人間と仲良くなり、空也がどこで何をしているかの情報がすべて翠香のもとにくるようにする。
 (地域の人間は半ば無意識に連絡する)
・空也に女の影が忍び寄ってきたら、ごく自然な形で邪魔をする。
・空也の恋愛(赤色)恐怖症を刺激しないように、あくまで幼馴染として友情を抱いていると
 見せるように体の隅から隅までコントロールする。

やべぇよ・・・やべぇやつがいるよ(2回目)
やってることは九条紅と同レベルかもしれませんが、翠香のほうがヤンデレの怖さがあるように感じました。
紅は割と動揺が行動に出やすいのですが、翠香は完璧にコントロールしています。
それでいて行動のすべてが空也のためにあるほどの好意を寄せています。
紅に「靴底のパターンはさすがにノーマークだ・・・」と思われていたときには
あ、本当にやばいんだな、この子と思いました。
あと印象的だったのが
紅に「宮代君、ずっと、あなたじゃない女の赤色に取りつかれているようなもんじゃない」
と言われ図星をつかれる場面があるのですが、
この場面、女は空也の母親をさし、赤色とは愛情のことになります。
つまり、空也の実の母親からの愛情に対して嫉妬していることになり、ちょっとゾッとしました。
まあ、このセリフを言える紅も怖いですが・・・                      ちなみに彼女も罪悪感はしっかり持っており、紅ほどではないですが共感できました。    (やめるつもりはなさそうですが)

宮代空也 (主人公)
「絵、どうだった?」
学生で日本一の画家。
両親も画家であり、家族仲は良好で暮らしていたが
母親が他に男を作り蒸発。その時のショックで母親がよく使っていた
赤色にトラウマを持つようになります。
また、天性の観察眼で人の行動から感情が色として読み取れるようになり
愛情の色=赤を見てしまうとトラウマを刺激されるようになります。
そのため、半ば恋愛恐怖症となります。

私の空也の印象は「天才」です。
もちろん画家として天才ですが、そもそもの考え方が違うのかな、と。
空也は落ち着いており、それでいてコミュニケーションもしっかりとれます。
ライトノベルの主人公の中では大人なほうだと思います。
ただ絵というものに対しての考え方が違います。
もし、万人を幸せにする絵を描けるなら死んでもかまわないと思っているのではないか
と感じました。(物語の最後は考え方が少しかわったかもしれませんが・・・)
人物紹介の最初のセリフは翠香のために体を酷使して描いた絵を渡した直後、
倒れこんでしまい、3日間寝込んで起きた後のセリフです。
このセリフで少し鳥肌が立ちました。
天才というのは凡人には重要な何かを犠牲にしてもやり遂げてしまう人のことを
言うのかな
と感じました。

あと、ラブコメには重要だと思う
「なんでヒロインは主人公のことを好きになったんだろう」の部分ですが
確かに、あの異常な二人に好かれる異常な人間だなと個人的に納得しました(笑)

ではここから不毛なのを承知で考察(ただの感想)みたいなことをします。

二人のヒロインの比較
ヒロインが物語を通じて対照的でした。
    翠香            紅
 人間を使った監視     機械を使った監視
 恋愛感情を完璧に隠す   恋愛感情がだだ漏れ
 人間関係を重視      人間関係が希薄
 運動が得意        運動音痴
ただ、同じ男子を独占したいという根幹は一緒なので
会話のウマは妙に合うのが面白かったです。

赤の克服方法
空也の赤色を克服する過程はこの作品のテーマの一つだと思ったので
注目しました。
最後の場面の流れをまとめると
空也⇒絵で人を救うために赤を使いたい
  ⇒赤に慣れるために自分の血を見て慣れようとする
  ⇒結局は母親の赤の印象が勝つ
  ⇒異常な女(翠香)の赤(愛情)で印象を塗りつぶす
  ⇒赤を克服する
となります。最初は「ん?やけにあっさり克服したな」
と思いましたが。空也は赤色に母親を重ねていたので
より強烈な赤色(愛情)で印象を塗りつぶすのは確かにありだなと思いました。

それには本当に強烈な愛情を向けなければなりませんが
まあ、翠香の愛情なら楽勝ですね、と納得しました。(笑)

また空也は最初、人を安心させる絵を描いていましたが
赤を克服してから人に不安を感じさせる絵(自分勝手な絵)を
コンクールに出しました。
空也が人を思いやれる人間だったのは自分を捨てた母親とは
違う人間になりたかったのではと感じました。
その中で母親の象徴(赤)で絵を描くことに葛藤していましたが
母親の印象の矛盾(自分を捨てた母親と自分と父親に愛情を向けた母親)が
自分の中で整理できていなかったのもあるのかなと。
自分と父親に愛情を向けた母親をどこかで信じたかったが
赤を克服したことで母親に対して踏ん切り、(優しかった母親をあきらめた?)
赤を自分勝手な色として使えるようになったと考えました。
しかし、優しかった母親の印象を放置している状況なのでトラウマは
結局残っているのでは?
とも感じました
藍月先生のあとがきで「愛は終わった」と「愛こそすべて」は同じ印象
とかいてありましたが母親のことも暗示しているのでは思いました。

・・・自分でも難しく考えすぎかなと思います。
 

どちらが勝つ?
これこそ超不毛な考察ですが、します。
先ほど書いたように母親のトラウマはまだ払しょくできていないと思います。
母親の赤を完全に塗りつぶせたほうが勝ちかなと。
そのためには愛情を向けてくれた母親も受け止めなければならないと
思いますが、空也の母親を憎んでいる翠香には難しいかなと思います。
あと画家の空也にこのような美しさを表現したいと思わせた紅が脈ありでは?
まあ何が言いたいかというと、
紅派なので紅に一票
ということです。

冒頭でも書きましたが、
キャラクターの心理描写や伏線の張り方がすごく丁寧であり
物語に没入できる、すごく面白い作品でした。
再度、読み直してみたのですが、すごく細かいところにまで伏線があって
恐れながらも感心しました。
何かライトノベル読んでみたいなと思う人がいたら
何の躊躇もなく進められる作品です。

ちなみに私のこの作品への一番の印象は
紅がかわいい。めちゃくちゃかわいい。
すごくかわいい。やばいほどかわいい。

です。
・・・アニメ化してグッズでないかな。全部買いあさるけど。
久しぶりに、それほどハマったヒロインでした。
ぜひこの後も紅の姿を読みたいです。

画像を載せていいかわからなかったので、イラストはありませんでしたが
Aちき先生のイラストも好みでした。
絵について深く言える程の知識は皆無ですが
重厚感(?)みたいなものがあって、ヒロインの重さが表現されているように
感じました。
あと紅が泣いているイラストが大好きです。

最後に、初めて感想を書いてみたので読みにくい、何言ってるかわからない点が多いと思います。本当はもっと語りたい魅力があったのですが、自分でも何書いてるかよくわからなくなったのでこの辺にしたいと思います。

こんな感想でも興味を持っていただいたらぜひ読んでみてください!


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