「神角技巧と11人の破壊者 上」 感想

著 鎌池和馬
画 田畑 壽之

その時、世界には亀裂が生じた。
邪なる神という存在自体が矛盾したものをその胎から溢れさせて

昨年、日本語版の開発中止が発表されたゲーム!!
とあるシリーズ
鎌池和馬先生が小説として命を吹き込む!!

という前情報を全く知らなかったため、
「なんかRPGゲームみたいな作品だな」と思いながら読んでいました。
鎌池先生らしく設定が細かく、壮大な世界観の作品となっています。
ざっくり言えば、エルフなどが出てくるファンタジーの世界で
ガンダムみたいな召喚獣で戦うみたいな話です。
(ガンダムというよりは鎌池先生作品の「ヘヴィーオブジェクト」
 に出てくるオブジェクト見たいな感じ?)

斬新な設定の神格技巧という兵器でスケールのでかい戦闘が読めたり、
個性的なキャラクターもたくさん出る
反面、
主人公の戦う理由が薄かったり、物語自体が予定調和で進んでいる感じがして
あまり物語に没入できない部分もありました。

(ゲーム用に作っていたシナリオの弊害かなと)

とりあえず、鎌池先生作品あるあるですが
まず設定を理解しないと作品を読めないので
主な設定を簡単に説明すると

邪神・・・強力な生命体。NARUTOで言う尾獣みたいなもの
神格技巧・・・大きな力をもつ邪神の角を利用して作製した兵器
       魔法を使えるガンダムみたいなもの。
       10体あり、10人が保有していることが確認されている。
11人目・・・把握できていない神格技巧保持者。
      どんなものにも擬態できる爆弾を作れ、目的不明の破壊行為を繰り返す。

他にも世界観の設定などいろいろありますが、
とりあえず上記の設定を覚えておけばいいと思います。

話の流れとしては
主人公が神格技巧の戦いに巻き込まれる
⇒いろいろあって神格技巧の保持者となる
⇒その際に「創造」の力も得る。(マインクラフトみたいな)
⇒11人目など神格技巧者同士の戦いに巻き込まれる。
⇒巻き込まれる中で様々なキャラ(主に美少女)と知り合っていく
となります。

ミヤビ・ブラックガーデン(主人公)
「・・・この用済みの最強、ここでいったんぶっ壊すぞ」
木こり見習の少年。神格技巧はルシフェルホーン
田舎の狭い世界で生きてきたからか、良くも悪くも純粋で
世情の善悪よりも、個人が好ましいかどうかで行動しているような気がしました。
(工廠王国の暴動では、私は事情的に暴動側寄りになりましたが
 ミヤビは考え方・生き方が好ましいという理由でエリザ側についたように感じました。)
鎌池先生作品の主人公なので、締めるところは格好よく締め、基本的には優しい主人公でしたが
ゲームシナリオの弊害なのか、突発的に理解できない行動をするところがありました。
例えば脱衣所で初対面のヒロインキャラと出会ったとき、
着替えを(意図的ではないとはいえ)見られたことを咎められそうになったので
神格技巧で角城本拠(ルイーダの酒場みたいなところ)に強引に連れ去ったときは
理不尽すぎて苦笑しました。
そういうところもあり、嫌いではないけど感情移入しづらいキャラでした。

セリーナ・ボーデンバーグ(ヒロイン)
「どうか私の散り際に彩を添えてくださいませ!!」
世界有数の商会の一人娘。神格技巧はシュバルツ シュッツェ
お金こそすべてという教育を受けてきたこともあり
お金のためなら過激なこと(神格技巧を使って力を誇示)も平気で行う。
ただ、上記のお金への執着の根底には親に認められたいという思いがあり
素直な女の子の面ものぞかせる。
この作品で一番好きなキャラクターでした。
キャラの背景が丁寧に描写されており、この作品の中で一番感情移入しやすかったです。
商会の力を示すため(親に認められるために)神格技巧にこだわるのも分かりやすかったです。
あとシュバルツシュッツェに乗り込んだ際のメイド姿が
めっちゃ可愛かったです!

エリザ・シルバーストーム(ヒロイン)
「くすんでしまった騎士の槍を、いったんへし折ってくれ!!」
工廠王国の騎士団(?)の一人。神格技巧はアイシクルブレッド
国と国王に忠誠を誓っている、生真面目な騎士。
神格技巧に妄信している国王に対して反旗を翻したほかの騎士団員に対して
最後まで忠誠を誓い、暴動を止める側に立った。
ミヤビは徹底的にエリザの味方になり最終的には救うことになったのですが
正直、何でここまで味方をするのかがよく分かりませんでした。
別にエリザが悪いというわけではなく、エリザも工廠王国もその国の内情も
唐突に出てきて私自身がついていけなかったことがあります。
セリーナは丁寧に人物の背景を描写されてミヤビが味方をするのも分かりましたが
エリザはいきなり出てきたと思ったら暴動中でピンチの場面であり、
いつの間にか助けていたという印象が強かったです。
あと暴動の事情を理解すると、「暴動側のほうが、どちらかといえば理解できるなあ」
と感じてしまったのもありました。

可愛いマスコットキャラ
作中に邪心の幼体であるアルマというキャラがいるのですが、
こいつがすごく可愛かったです!
「く-!」と鳴く描写がすごくかわいくて、私のペットに欲しくなりました。
鎌池先生の作品は大体読んでいるのですが、
良くも悪くもキャラの造形にはひねりを入れてくるのが普通だったので
ここまであざといキャラは珍しいなと思いました。(もともとはゲームシナリオだったせい?)

ゲームシナリオの弊害
ゲーム都合の設定、話の流れがあり、本として読むと違和感を感じました。
例えば、角城本拠。
新しいキャラを次々とストックするためのルイーダの酒場みたいなところであり
ゲームとしてやれば特に違和感はなかったのですが、
本として読むと何のために登場したキャラなのか分からず
小説の流れとして、この場面要るのかなと感じました。
このあたりは続きを読むと、また感じ方が変わるかもしれません。
 

ゲームとしての興味
少し苦言が多い部分もありますが、ゲームとして考えると
滅茶苦茶プレイしてみたかったなというのが本音です。
神格技巧は滅茶苦茶尖った近未来の兵器という感じで中二病がくすぐられ
女性キャラは可愛く、男キャラ(メビウス)は恰好いい。
世界観も壮大でワクワクしてきます。
ゲームの開発は中止されてるのが、非常に残念です。
(ただ、あとがきなどを読むと
 テイルズのような世界観+マインクラフトのようなクラフト要素+
 アーマードコアのような対戦みたいなゲームになりそうで開発大変そうだなと感じました。)
 

まとめ
鎌池先生作品を昔から読んでいる身とすれば
もっと尖ったキャラ(ブラッドサインの女王)や尖った設定(アポカリプス・ウィッチ)を
読みたかったので少し消化不良
でしたが、化け物みたいな兵器同士の対戦や
少しずれている、魅力的なキャラが多数出てくるのは面白かった
です。
既に続きも出ているようなので早く読みたいと思います!

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