「元カノが転校してきて気まずい小暮理知の、罠と恋。」 純粋な恋心の必死な”罠”

ガガガ文庫

つい先日発売された「幼なじみが妹だった景山北斗の、哀と愛。」の”前作”に当たる作品。

主人公とヒロインの恋物語はこの巻で始まり終わるため、1巻読み切り作品でもあります。

あらすじは下記。

なぜきみは、僕に別れを告げたのか。

冷たい瞳の転校生は、元カノだった!
中学時代、理知は孤高の美少女渋谷ないると、秘密の恋人同士だった。放課後の生物室で誰にも内緒の甘く濃密な時間を過ごしていたが、ないるは転校してゆき、理知に一方的に別れを告げた。そんな気まずい相手とクラスメイトになり、席も隣になってしまう。高校生になって、いっそう大人びて美人になったないるを無視しつつ、意識せずにいられない理知。一方ないるも、理知に冷たい横顔を向けつつ、意味深な発言を繰り返す。

離れようとするほどによみがえる、まばゆい記憶、苦くて痛くて甘い想い。

変わり者の上級生佐伯冴音子の策略により、二人は“恐竜の卵”を育てることになり、ますます意識し合うように。
やがて理知は、ないるの本当の気持ちと、失われた日々の“真実”に触れる……――。

「文学少女」でおなじみ野村美月先生の青春シリーズ第一弾。

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「青春シリーズ第一弾」のキャッチフレーズがであり、実際には同じ世界観の第2弾となります。

というのも野村美月先生がお休みに入る前の2014年にダッシュエックス文庫から第一弾に当たる同じ世界観の作品「親友の彼女を好きになった向井弘凪の、罪と罰」が出ているため。


今回、出版元をガガガ文庫に変えたために名目上は第一弾となっています。

主人公もヒロインも入れ替わってはいるんですが・・・前作から引き続き出ているサブキャラ二人があまりに強烈すぎるため、前作も確認したくなりました。

物語は中学時代に主人公を振ったクールな元カノが、転校してきて主人公の隣の席に座るという超気まずいところから始まります。

なぜ彼らは別れたのか。ヒロインの本心は何なのか。

すれ違う純粋な恋心を感じられる作品でした。

ここからネタバレありです。

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主人公を通したヒロインの姿と本当のヒロインの姿

物語の前半部分では主に主人公の”都合のいい”ヒロインへの偏見が中心となります。

―――自分を振ったないるは今でも自分を嫌いなはずだ

―――だから、隣の席で嫌そうな顔をしてるんだ

―――軽いイケメンで有名な相羽と付き合っているのは本当はそういう男が好きだったからなのか

―――だから付き合っていたころも、大人の男と浮気していたのか

主人公の思い込みが入っていたのは分かっていましたが、元カノの言動に振り回される理知に感情移入してしまうところがあり、ヒロインのないるをドライで不思議な恋愛観を持っている恋多き女性のように無意識に感じていました。(地味な理知が周りから一目置かれるないると付き合うことにコンプレックスを感じていたところも共感できました。)

しかし、実際の彼女はただただ純粋に理知を愛している恋する乙女であり、彼女の行動のすべては理知のためでした。

中学時代、理知を求めすぎて理知がストレスを抱えてしまい、一時的とはいえ彼女であるないるを忘れてしまったことがないるの中で強い負い目となります。

隣の席で理知を避けてたのは今では理知を好きではないことを示し、理知を追い込まないため。チャラいイケメンと付き合ったのは理知をまだ好きなことを悟らせないため。彼女は時に泣きながら一番大好きな人に”嫌い”という感情を見せていました。

すべては理知のため、自分の愛している人を守るためでした。

主人公のフィルターを通してみたヒロインと実際のヒロインとのギャップが良かったですね

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主人公への病的なヒロインの愛

ないるの母親の恋人が肉体的関係を迫ってくるというどす黒い背景もあるのですが、それにしてもないるの理知への愛情はちょっと異常なものがありました。

中学生の時に学校で理知に肉体関係を迫ったり、理知といる学校だけ残して世界が滅びればいいと発言したり。

いわゆる若干ヤンデレ気味だったないる。

しかし、この作品ではそんな彼女を理解できない存在ではなく、深い愛情をもった女性と思わせてくれました。男の私でも彼女の理知への愛が理解でき、彼女を応援したくなりました。

このような女性の激しく異常な深い愛情を読者に理解できるように描写するところが、野村美月先生はすごいなと思います。

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心を削る圧倒的なNTR描写!

結論から言えば、全く寝取られてなんかいなかったのですが(笑)

ないるが相羽と(偽で)付き合っている際の描写は心にクルものがありましたね・・・

特にないるが中学時代に理知に歌っていたラブソングを、相羽に向けて歌っているところは心に傷を負い、うっかり会社を休むところでした。

気にしたくないのに、二人の関係を気にしてしまう理知の感情が滅茶苦茶共感出来て・・・読んでてつらかったです。

多分、前作を読んでて相羽の性格などを理解できていれば、もう少しショックも少なかったと思いますが、今回が初見だったため

「何だこのいけ好かない爽やかイケメンは!!」

と胃をきりきりしながら読んでしまいました(笑)

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まとめ

思春期の男女の、すれ違う純愛を、自分を狂わせるほどの愛情を描き切った作品。

最後に理知が、ないるへの愛のために論理的な考えを捨てて行動したのが印象的でした。

ライトノベルにしては少し重めな作品だとは思いますが、ハッピーエンドなので人に勧めやすい作品です。

まあ、相羽については彼の性癖からハッピーなエンドを迎えるところを想像できないのですが・・・彼は最終的に幸せになれるんだろうか。


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