貘<バク> -獣の夢と眠り姫- 1巻感想 魅力的な登場人物たちの関りが面白い! SF関連の設定はふわっとしてたかな・・・

ガガガ文庫

獏というタイトルからも分かる通りに「夢」の物語。夢を仮想現実に置き換えて、眠っている間でも生産活動を行えるという世界の話。眠っている間でも働けと言う、私にとっては地獄のような世界ですね。(そういう作品ではない)

その夢の中で家族を殺傷されたトラウマを持つ主人公とその夢の中で生まれた主人公の姉そっくりの少女。傷つけあう二人の間に生まれる絆や、その周りの魅力的な登場人物との関わり合いが面白い作品でした。

SF関連の設定はふわっとしてたかな・・・。

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あらすじ

電子に代わり夢を媒体とする通信技術が発展した現代。共有された夢の中、人々は睡眠時でさえ経済活動に明け暮れていた。夢に侵入し精神を破壊する悪性因子、〈悪夢(ノイズ)〉……それを武力で制圧することを生業とする者たちがいた。彼らは夢を喰らう幻獣になぞらえ、〈貘〉と呼ばれていた。高校生にして〈貘〉の少年、瑠岬トウヤはある日、車椅子に乗った“魔女”と出会う。悪夢を狩る少年と、少女の願いが交錯するとき、災害とまで呼ばしめる悪夢、〈獣の夢〉が目を覚ます。――その意志が世界を歪める、SF異能ダークバトル開幕!

ガガガ公式HPより
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特徴

夢の中でも生産的行動ができるという世界。その世界を私たちの電子世界と例えるとコンピューターウィルスみたいなもの、悪夢が発生しており、人の精神を犯していきます。それを倒すために動く少年少女の物語。

夢の中で殺された主人公家族。主人公以外に生き残った植物人間状態の姉と姿かたちがまるっきり一緒なメイアという不思議な女の子が現れ、主人公がひたすら蓋をしていたトラウマを刺激されます。

トラウマを刺激されていく主人公と、人の気持ちがいまいち分からず、ただ主人公に嫌われることを望むヒロイン。どう考えても反発しあう二人が、傷つけあいながらも距離を近づけていく物語です。

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魅力

登場人物、特に女性がキャラが魅力的でした。

まずヒロインのメイヤが魅力的。人の心が分からず、目的も不明。しかし何もわからない純真無垢な子供の様な行動を行い、愛おしいところがあります。主人公のトウヤに嫌ってほしいという願望がありながらも、意図せず主人公の大事な人になっていることろが面白かったです。

あとこの物語で最も愛おしい人物だったのはトウヤの保護者となっているレンカさん(26歳)。

普段は男勝りな口調で、強引だが頼りになる上司を演じていますが、実は主人公家族が殺された事件で主人公と同等かそれ以上のトラウマを抱えている人物。

そのトラウマを刺激されたり、優しくされたりすると幼児のように泣きじゃくったり、素直な反応を見せるのが可愛かったです。

少しエヴァンゲリオンのミサトさんを思い出しました。

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考察

SFもので大事なのはこの世界ではそういう理屈・理論なんだなというルールを把握させるところだと思うのですが、この作品ではそこが弱かった気がします。

今回の「夢」という設定。正直、抽象的過ぎてよく分からなかった。私の勝手な解釈では大勢の夢の集合体から仮想現実を作って、眠ることでそこに出入りできるというものだと思うのですが・・・、それは夢なのか?

「夢」というのは個人が持っている妄想であり、それを全体で共有する世界とするのは個人的にピンとこない気がします。また、そこをそういう世界だと納得しても、ではそこにどういう意味があるのか、どういったことが可能になるのかといったルールがよく分からずに、個人的にそのあたりがふわっとしていました。(一応、眠ったままでも生産活動を続けられるとのことでしたが、通信サービスとか限定?)そのためか、その夢の中から生まれたというメイアやクナハと言った存在、終盤で夢の中のメイアと現実世界のメイアの道をつなぐといった場面で「?」となり、いまいち物語に入っていけないところがありました。この世界のルールがハッキリ理解できなかったで、何故それが起きたのか、それが起きたのがどのくらい異常なことなのかが把握できませんでした。

たとえばインセプションという映画では他人の夢の中に潜るという設定がありました。人の夢には階層があり、より深く潜ってその夢での出来事を変えることによって、夢を見ている人の深層心理に影響し、その人の人格・行動を変えると。現実的に考えれば「そんなことあるか!」と思いますが、その物語にはしっかりと理論・ルールがあり、それを分かりやすく説明してくれているのでその物語のルールを把握でき、物語の起承転結を登場人物の心情と共感し楽しむことができました。

SFだけではないかもしれませんが、その世界のルールをきっちりと読者に認識させるのは重要なのかもしれません。

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まとめ

登場人物の魅力とその関係性が面白かった作品

メイアと レンカさん(26歳) はお気に入りで、特にレンカさんは虐めたくなりました!(オイっ)

一方、SFの設定は全体的にふわっとしている印象で、いまいち物語にはいっていけませんでした。

あとは個人的な趣味ですが、せっかくメインヒロインのメイアの姿が姉そっくりなんだから、主人公が姉に対して倒錯的な気持ちを抱いていたと設定したらドロドロな気持ちが渦巻いて面白かっただろうなと。・・・基本的にドロドロしたトラウマが渦巻く作品で、それは余計か。


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