「灰色な存在達」創約とある魔術の禁書目録 3巻

「灰色な存在達」創約　とある魔術の禁書目録　3巻

バトル

2021.05.01

「まあ、暴力にすがったくせに善人を気取った報いかなあ。これは。」

創約とある魔術の禁書目録3巻の感想を書いていきます。

いや～。これまでのとあるシリーズの中で1番緊張感のある話だったかもしれません。なにせ、どの登場人物がどのタイミングで退場（死亡）するのかが分からなかった。登場人物も癖がありながら共感もできる人物が多く、シリーズの中でも面白い話でした。

今回の話、とあるファンに分かりやすく紹介すると「レベル5を外し、アンチスキルを入れた　旧約　とある魔術の禁書目録　15巻」という感じでした。アクセラレータという強力な力を持った人物がいないことで、自分の信条を貫き通せる登場人物はおらず、話が進むごとに事態が悪化していきます。

あらすじ
正義でも悪でもない中途半端なものたち
学園都市の崩壊
まとめ

あらすじ

愛しのお姉様・御坂美琴と二人っきりで過ごす魅惑のクリスマスが、ついにこの手に……! と期待していた白井黒子だったが、気づけばなぜか彼女の隣には頭髪バーコードでメガネ装備の『警備員』のおじさんが……!?
聖なる夜、『風紀委員』の黒子に課されたのはオペレーションネーム・ハンドカフス、学園都市の『暗部』を全て潰す計画だった。そのリストの中には、浜面仕上や滝壺理后の名も含まれており……。追う者と追われる者、双方が生き残るために否応なく激突する中、ふとどちらもが感じた。……この計画は、何かが妙だと。
事態打破の鍵となるのは『学園都市最大の禁忌』という謎のフレーズで――!
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正義でも悪でもない中途半端なものたち

新しい統括理事長になった一方通行が出したオペレーションネーム・ハンドカフスによってアンチスキルにより暗部を撲滅することになった3巻。今回の話で、最後まで正義を貫き通せたのは白井黒子と黄泉川の2人だけだと思います。アンチスキルは暗部の子供を比較的善良な「好普性」と悪辣な「嫌普性」に分け、嫌普性に関しては殺しても構わないとしました。この時点でアンチスキルの正義はなくなります。暗部たちは、暴れまわるもの、とりあえず息をひそめるもの、そして浜面たちのように学園都市からの脱出を図るものに分かれました。

では今回、基本的に「悪」しかいなかったのか。私はそうは感じませんでした。色で言えば「灰色」な人物が多かったと思います。子供たちを救うために暗部に身を投じた者、自分の好きなもの（拷問系）を研究したために暗部として指定されてしまった者、これらの白に近い灰色はもちろん、人の命を材料にアンドロイドを作り出したマッドサイエンティスト、世界を壊すほどのスキャンダルを撮ることに魅了されてしまった記者など黒に限りなく近い人物もどこか共感できる部分がありました。

この灰色たちは戦力においてもある意味「中途半端」であり、いつ誰が退場（死亡）するのかが全く分からず、白に近かろうが黒に近かろうが時がくれば「平等」に死んでいきました。とあるシリーズでここまで、「死」に対して平等だったのは初めてかもしれません。

あと印象的だったのが、体制側の正義を最後まで貫き通した黒子。最初に暗部の1人を追い詰めた際に黒子には何も落ち度が無かったですがその暗部が死んでしまいました。周りのアンチスキルが「この作戦では、暗部は死んでも構わない」と考えている中で、黒子は自分の行動に問題がなかったかを判断する内部監査をしきりに求めていました。人を殺したんじゃないかという罪悪感から来る行動ではなく、治安を守る体制側の人間として間違った行動をしていなかったかを確認するための行動。黒子は非常に冷静で精神的に大人な部分を見せてくれました。格好良かったです。・・・ほんとお姉さまが絡みさえしなければ・・・。

学園都市の崩壊

最後のほうでは、今まで隠してきた子供たちの死に対する罪の意識に耐えられず、大量のアンチスキルが自決しました。それ以外にも今回の暗部との戦闘で相当の被害を出しており、学園都市の自治機能はほとんど崩壊してしまったと考えて良いのではないでしょうか。

そして、今回の騒動で冷静に身を隠していた暗部（おそらく今の学園都市でも生き残っていけると考えたものたち）、AIM拡散力場の力を吸収し幽霊から化け物に変じたフリルサンド＃G、そして「ニコラウスの金貨」という物理的法則を無視して望む結果を叶えてくれるコｓインを使い今回の殺し合いを陰で操ったアンナ＝シュプレンゲル。彼らの存在や、そもそも一方通行が学園都市をぶっ壊そうとしていることで、今後は学園都市をどう壊していくのかがポイントになりそうです。

まとめ

正義、悪ではなく、自分の信じる信条や愛する人のために戦う。そして、それらの貴賤に関係なく、死ぬときは平等に死んでいく。正しい、正しくないに関わらず、死ぬか生きるかだけの結果が提示されていく虚しさはとあるシリーズでは新鮮で個人的にとても面白かったです。

今後の展開は、前述したとおり学園都市をどうぶっ壊すかがテーマとなりそうです。そうなると、気になるのは上条さんの立ち位置。アンナが敵としている以上、上条さんもアンナとは対立するとは思いますが・・・ただ学園都市をぶっ壊そうとしている一方通行の考えに同調するかというと疑問。創約では上条さんがジョーカーになるのではないかなと思います。