「ザ・エンタメ!ザ・ライトノベル!」探偵はもう、死んでいる 1巻 感想

ライトノベル

ライトノベルのタイトルで「探偵」と付いているのは珍しく、また「もう死んでいる」という後ろ向きな表現も珍しい。シリアスで少し硬い本格ミステリーが読めるんだろうなと思っていました。まさか異能を持ってる人造人間なんてものが出てくるわけないし、その人造人間と銃でバトルするわけもないし、そもそもトリックの一つもないし、「本格ミステリーを期待している人には申し訳ない」なんてメタ的なセリフが出てくるとは思わないじゃないですか!!!

というわけで、この作品には本格ミステリーや心に傷を負うようなシリアスを期待するのではなく、魅力的なキャラクター同士の掛け合いを楽しみながらライトノベルならではの何でもありの読後感の良いエンタメを味わう作品です。

次のような人におススメかなと思います。

  • 深い傷を負わずに、気軽に楽しめる作品が好きな人
  • ライトノベルならではの何でもあり感が好きな人

個人的には「とあるシリーズ」が好きな人には刺さりそうだなと思いました。

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あらすじ

高校三年生の俺・君塚君彦は、かつて名探偵の助手だった。
「君、私の助手になってよ」
――始まりは四年前、地上一万メートルの空の上。
ハイジャックされた飛行機の中で、俺は天使のような探偵・シエスタの助手に選ばれた。
それから――
「いい? 助手が蜂の巣にされている間に、私が敵の首を取る」
「おい名探偵、俺の死が前提のプランを立てるな」
俺たちは三年にもわたる目も眩むような冒険劇を繰り広げ――そして、死に別れた。
一人生き残った俺は、日常という名のぬるま湯に浸っている。
……それでいいのかって?
いいさ、誰に迷惑をかけるわけでもない。
だってそうだろ?
探偵はもう、死んでいる。

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登場人物

君塚君彦(主人公)

出典:探偵はもう、死んでいる

今作のストーリーテラー。昔からトラブルに巻き込まれる体質で、ヒロインのシエスタとも飛行機のハイジャックで知り合い、そこから「名探偵の助手」となる。3年ほどシエスタと一緒に人造人間を作っている悪の組織「SPES」と対立していたが、ある事件でシエスタが死亡。そこから1年くらい平凡な暮らしをしていたが、シエスタの心臓を移植された夏凪渚と出会い、また「SPES」との対立が始まる・・・。

お人好しのやれやれ系主人公。1巻時点ではシエスタに対しての特別な感情以外は特徴的なことはなかったかな・・・?

シエスタ(ヒロイン)

出典:探偵はもう、死んでいる

「SPES」と対立する人物。相手の言動の違和感に鋭く気づき、そこから物事の本質を突いてくるため探偵としては優秀。しかし、事件が発生する前から下準備をして解決するなど探偵というよりはスパイのエージェント。1年前にとある事件で死亡。心臓を渚に移植されて渚の中にある意味別人格として居る。

理知的だが、君彦に関しては感情的にもなる。

夏凪渚(ヒロイン)

出典:探偵はもう、死んでいる

本作のヒロイン。昔から病気でまともに動けなかったがシエスタの心臓を移植されてからは通常の生活を送れるようになる。心臓を移植されてからシエスタの君彦に会いたいという想いを無意識に感じられるようになり、名前も分からない人を探すことになる。そこで新聞で「名探偵」と報道されていた(茶化されていた)君彦に相談をすることになり、そこから「シエスタの心臓持ち」として「SPES」に命を狙われることになる・・・。

登場人物では一番背景が詳細に分かり、感情移入しやすかったキャラ。心臓移植によりまともに動けるようになったが、自分の人生を生きる上での軸がなかった。そこでシエスタの心臓を移植されていたことを知り、自分が「名探偵」としての役割を引き継ぐという軸が生まれます。

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本格ミステリー・・・ではない

ミステリー要素が全くないわけではありませんが、本格ミステリーではないです(笑)。探偵とその助手という関係性が重要なのであって、ミステリーや推理が重要なわけではありません。「ルパン三世」のような世界観に「劇場版 名探偵コナン」のようなアクション、そこに物語ごとに可愛い女の子が出てきて仲間になるというライトノベルの定番を合わせたような作品です。

シリアス要素も薄いです。敵に暗い過去があるという描写もありませんし、基本的にハッピーエンドに向かって物語は進みます。ヒロインの一人であるシエスタはすでに死んでおり、主人公にも大きな影響を及ぼしていますが、渚の中に人格としては隠れています。1巻の終盤では渚の体を借りて主人公とも会話をしています。一応、渚の体を借りるのはこれが最後だと言ってはいますが、渚の中には生き続けていることから、あまり悲壮感もないです。作品自体があまり重くならないように描写してある気がするため、シエスタと渚の設定は狙い通りなのかなと思いました。

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自由な世界観・設定・表現

この作品を読む上で意識したのは、世界観や展開にツッコミを入れないことです(笑)。例えば、警察の知り合いの人に(割と頻繁に)助けを借りるのですが、そのうちの一つに機関銃つきのヘリコプターで助けてもらうというのがありました。・・・いやいや、警察関係者の一人がそこまでできるわけないじゃん!と思わず心の中で突っ込んでしまいましたが、そのようなところは気にしちゃだめです。この作品で重要なのはあくまでキャラクター同士の掛け合いや関係性の進展であり、周りの世界観や物語の展開はそれに合わせているように感じました。

また、前述したように「本格ミステリーを期待している人には申し訳ない」などのメタ的な発言や章ごとどころか場面の切り替えごとに副題を付けるなど、ライトノベルの自由に表現できる特徴を楽しめました。

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まとめ

元相棒の探偵ヒロインが死んでいるという重たい設定ですが、読後感の良い比較的明るい作品です。世界観や話の展開にあまりリアルさを求めない代わりにテンポよく物語が進み、ストレスなく読めます。ザ・エンタメ!ザ・ライトノベル!といった作品です。逆にここまでらしいライトノベルも久しぶりに読んだなと思いました。個人的には死んでいる元ヒロインの意識が現ヒロインに宿っているという設定を活かしてもっとシリアスな3角関係だったり、話の語り手を渚にしてみたりしても面白そうだなと思いましたが、この作品の方向性とは全然違いますね・・・(笑)。

2021年7月にはアニメ化もされるので、どのように表現されるのか楽しみです。


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