とある魔術の禁書目録Ⅲの円盤特典である「とある科学の超電磁砲SS③」の感想を書いていきます。
一方通行の円盤特典を読んだ時にも思いましたが、特典小説は本編ではできないような話が多いため新鮮に感じます。今回の話の中心人物は超電磁砲の4人組と常盤台の学生。上条さん主役の話だとあまり取り扱えない気がする「家柄」や「名声」がテーマになっています。超電磁砲の4人組が好きだという人や美琴のカッコいいところを見たいという人にはお勧めだと思います。
登場人物
咲蓮誘璃
常盤台中学の1年生、黒髪のツインテールで最初のころは音楽のバイオリンの試験で黒子に突っかかっていきました。作中でも黒子からのツッコミがありましたが、性格は婚后さんと似ています。お嬢様然としててプライドは高いですが、素は人一倍優しく正義感も強い。婚后さんとの違いは育ってきた環境になります。咲蓮は5歳のころに描いたデザインがカードゲームのデザインとして爆発的に売れ、自分一人の手で常盤台のお嬢様たちと同じ位に上がってきました。自分一人の力で這い上がったという事実がある一方、元々は普通の家庭だった自分の家に大量のお金を入れてしまって壊してしまったという負い目もあります。そのため、分かりやすい伝統や名声のあるもの(今回で言えばヴァイオリン)を手に入れて稼いだお金に見合う格をつけようとしますが、美琴や黒子たちに咲蓮本来の力や魅力を指摘され、伝統や名声に対しての執着から徐々に離れていきます。
お姉さま(美琴)のカッコいい活躍
上条さんが居れば可愛い恋する乙女になりますが、上条さんが居なければ本当にかっこいいお姉さまの美琴さん(笑)。今回、レールガン、砂鉄の剣、周囲にあるものを磁力で引き寄せて縦にするなどバリエーション豊かな戦い方を見せてくれました。また、たとえ劣勢でも弱音を吐くどころか、相手にすごんで見せる精神力。能力を封じられて、ある程度の攻撃を受けるとしても全身で向かっていく覚悟。カッコいいお姉さまがこれでもかと見れました。(ちょっと呪術廻戦の野薔薇ちゃんとダブりました。)
あとは食蜂とのコンビが面白かったです。黒子とのコンビも良いですが、こちらは主従関係があるのに対し、食蜂とはあくまで対等なライバル関係。お互い嫌い合っているくせに、やることに対してはある程度の信頼は置いている。美琴・黒子や食蜂・帆風の間よりも互いのことを分かりあっているかもしれません。(だからこそ気に入らないのでしょうが。)
自分を特別にするのは外的要因か内的要因か
今回は「自分は特別な人間なんだ」という価値観(自己肯定感)を物や家柄から得るのか、それとも自分自身の在り方から得るのかというのがテーマかなと感じました。家柄とは少し昔の貴族のようなもので、今の日本ではあまりピンと来ませんし、科学の都市である学園都市にはイメージが合いません。しかし才能(遺伝子)依存の能力者のレベルが絶対の価値である学園都市において、能力以外の価値観で家柄が出てくるのは当然なのかなと私は思いました。普通であれば運動とか勉強とか交友関係の広さとかが学生の自分の価値を高めるものとしてありますが、学園都市では「能力」が絶対であり他のものは能力に比べれば無価値です。そうなると、自分の価値を分かりやすく上げてくれる家柄、それが難しければ自分の身に付けるものに執着するのは当然かなと感じました。(何より大人たちが能力絶対主義なので・・・)そのような背景を持つ敵に対し、今回のある意味主人公である咲蓮が善意と誠意と正義感そして友情を通じてアイデンティティを確立し、敵の思惑を覆していくところが見どころになっています。
学園都市の大人
今回は「とあるシリーズ」にしては珍しく大人たちにもフォーカスされています。前から、あの独自の政治体制、治安体制の中で大人たちの役割は大きいと思っていたのですが、どうも目立たないというか、頼りなさを感じていたので今回フォーカスしてくれて嬉しかったです。今回、大人たちに対しての印象は見直した面と多少がっかりした面がありました。面白いのは見直した面は敵のキャラクターに対してであり、がっかりしたのは味方サイドのキャラクターに対してだったことです。
見直した面としては子供の能力者に対しての戦闘準備と強さ。屈折した正義感を持っているアンチスキルの井上というキャラがいたのですが、美琴との戦闘においてしっかりとした準備で能力を潰し、差がある素の戦闘力で美琴を追い詰めていきました。アンチスキルはレベル5に対しては特に対抗策はないと思っていたので「やるな~」と少し感心しました。(井上自身はかなりのクズですが。)
逆にがっかりしたのは超電磁砲原作でも出てくる寮監。最後、母親の罪が明るみになったことにより、常盤台中学校の教師の一部が体面のため咲蓮を退学させようとします。その際に食蜂を含む最大派閥の影響により咲蓮の退学の話を頓挫させます。そのことを寮監がアンチスキルに当たり前のように話すのですが・・・。せめて、大人から出たもめ事は大人たちの手でどうにかしてくれないかなと感じました。学園都市は大人たちが管理している割には子供に任せすぎだと思います。
美琴のカッコいいところや学園都市の大人たちとの関係性など、原作を読んでいる人にも是非読んでほしい特典小説でした。改めて思ったのは、イケメンな性格といい、攻撃のバリエーションの多さといい、丁度いい強さといい、美琴は正統派の主人公としてピッタリだなということです。上条さんでは攻撃のバリエーションが少なく、一方さんでは強すぎる、というところで美琴が主人公の話はひねりのない王道真正面の話でも十分面白いなと感じました。今後も超電磁砲や原作での活躍が楽しみです。
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